TRAVELLERとは?
旅人です。以上。
・・・というわけではなく、TRPGのタイトルです。
TRAVELLERは、米GDW(ゲーム・デザイナーズ・ワークショップ)社から発売されていたTRPGシリーズで、日本ではHOBBYJAPAN社から翻訳が出ていました。GDW社が倒産してしまった後も、引き継いだメーカーなどからシリーズが出版されています。
現在日本では雷鳴社が、最初に発売されたTRAVELLERシリーズをあらためて輸入&翻訳販売中です。
TRAVELLERはSFテーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム(TRPG)です。
TRPGについては長くなるのでここでは説明しません。
要するにルールのあるごっこ遊びです。
さてSFといっても様々です。TRAVELLERはその中でも昔なつかしいスペース・オペラ世界を再現したゲームと言えるでしょう。ただスペース・オペラではなく、世界を付けたのには理由があります。
TRAVELLERの世界は広大な銀河帝国が広がり、宇宙船が飛び回るスペース・オペラらしいものなのですが、普通にやったのではなかなかその主人公にはなりづらいのです。
まずキャラクター作成ルールは、歳をとりながら成長させていくタイプで、当然若々しいキャラクターは技能に乏しいということになります。
また戦闘ルールにプレイヤーキャラクターに対する特典はほとんど無く、かつリアル指向になっています。つまり弾が当たると死んでしまうのです。当たり前ですが。
更にお金の問題があります。TRAVELLERの世界では生きていくのにまずお金がいります。スペオペらしく宇宙船を持っていたりすると、これはもう莫大なお金がかかるのです。
以上の条件を満たしてゲームをすると、だいたいこうなります。
キャラクターは30〜40代のおじさん、おばさんで、危ないところには近寄らないように気を付けており、中古の宇宙船の維持費を稼ぎ、ローンを返済するため、星から星へと細々と貿易を行って生きている・・・・・・
なんて楽しいゲームでしょう!
あ、待って下さい。これはあくまでTRAVELLERの一面です。スペース・オペラの主人公が不可能なわけではないんです。
TRAVELLERはどんなSFでも再現できる、というのが歌い文句でもあったのです。実際やろうと思えばなんでも出来ます。ただしそれはそうなるようにレフリー(TRPGで主にゲームマスターと呼ばれる立場のプレイヤーを、TRAVELLERではレフリーと呼ぶ)が用意しなければなりません。
化夢宇留仁の場合は、あまりレフリーがはっきりした道筋を用意せず、プレイヤーのやりたいように進んでゆき、だんだん世界が出来てゆくというスタイルが好きなので、けっこう上記のような呑気なゲーム内容が多いのです。またそれがやりやすいゲームでもあるわけです。
TRAVELLERの基本設定を説明します。だらだらと長文を読むのはいやだという方は、ここさえ読んでいただければ、他のコーナーもだいたい分かると思います。
銀河帝国
TRAVELLERの舞台は第3銀河帝国歴1100〜1115年あたりになります。続編では、更に後や前の時代も設定されています。
第1帝国は地球からの勢力によって倒され、地球勢力によって作られたのが第2帝国。その第2帝国も通信環境の不安定さから自然消滅的に消え、その後長い暗黒時代を経て、復興の末第3帝国にいたりました。
帝国歴の1年は地球と同じ365日です。これは第2帝国の影響がまだ残っているためです。他にも地球産の文化が帝国のそこかしこに残っています。
残っているというのは、この世界があまりに遠い未来だと言うのが理由の一つです。帝国歴1100年は西暦にして5700年あたりになります。
人類種
遥か昔に高度な科学技術を持った「太古種族」と呼ばれる種族が、地球から生物を銀河全体にばらまきました。その結果、それぞれの世界で人類とほとんど違わない知的生命が進化発達し、それぞれの文化を持ちました。
第1帝国はその1つのヴィラニ人という人類種が作ったものです。
地球産の人類は第2帝国の後、ソロマニ人と呼ばれています。他にも多数の人類種がいますが、混血が進んでいます。
人類種以外にも変わり種としては、同じく地球から連れ出された犬から進化したヴァルグル人というのがいます。
科学技術
遥か遠い未来ですが、科学技術が全体的に高まっているわけではありません。何しろ広い宇宙のこと、維持が追いつかないのと人口の集中が一部に限られているからです。
更に帝国は封建制をひいており、各世界でまったく異なった文化、科学技術が形作られています。
そんな帝国をなんとか一つにつなぎ止めているのが、ジャンプ航法の開発と、それによる通信ネットワーク、Xボートシステムです。
更にTRAVELLERで代表的な科学技術といえば、反重力があります。重力影響下でその作用を操作することで推力、浮力とするシステムで、一昔前のSFではよく見かけました。
核融合もTRAVELLER世界では重要かつ無くてはならないテクノロジーです。重水を燃料に効率の高いエネルギー供給が実現しています。
スピンワード・マーチ宙域
TRAVELLER初期において、最も多くの設定が公開されたのがスピンワード・マーチ宙域でした。
ここには帝国以外の勢力との境界線がひしめいており、シナリオソースがごろごろしていたのがその理由のようです。
また帝国中心部とは遠く離れた辺境に設定されており、歴史を気にせず自由なシナリオを作るのにも向いていました。
スピンワード・マーチ宙域内でも重要な星域の一つが、リジャイナ星域です。
帝国と敵対するゾダーン連盟との境界が近いこともあり、軍事貿易ともに最重要拠点でもあり、最も雑然として活気のある星域とも言えるでしょう。
※プレイヤーの視点に基づいた世界の詳しい説明は、こちらにあります。
今ではどうか知りませんが、昔RPGの発達の様子を世代に分けて説明していました。
第1世代がD&Dに代表されるダンジョンなどをメインの舞台にしたゲーム要素の強いもの。
第2世代は世界設定に力を入れ、プレイヤーがその世界を生きること自体を楽しむタイプ。
第3世代がキャラクター要素を強化して、ドラマのような展開を目指したもの。・・・・だったと思います。
TRAVELLERは代表的な第2世代のRPGと言えるでしょう。
初出版当時から広大な銀河帝国のデータが作られ始め、その歴史も綴られてゆきました。
シリーズを重ねるにしたがい設定は増え、歴史も進んでゆき、TRAVELLERが続編MEGATRAVELLERになっても、更にルールを一新したNEW ERAになってもやはり世界は同じ時間線上にあり、ただ歴史のどの部分を表現しているかの違いしかなかったのです。
つまりTRAVELLERの骨子はその世界そのものにあるわけです。
ただしTRAVELLERが決められた世界でしかプレイできないかというとそうではありません。銀河帝国はあくまで広く、設定されていない、または公開されていない部分が数多くあり、歴史に関しても世界全体に影響するような大きな流れしか公開されていません。
加えてルールブックには、世界、宇宙船その他ありとあらゆるものがオリジナルで作れるルールが用意されています。その多くはサイコロを使ったランダム作成ルールまで。
レフリーは設定と歴史に空いた穴を自分の好きなように料理できるわけです。ここが最も面白いところかもしれません。
それなりの手間もかかりますが、そこが又よかったりするのです。
TRAVELLERはキャンペーンゲームに適したTRPGです。
というよりもキャンペーン専用のTRPGといった方がいいかもしれません。
上記にもある通りTRAVELLERにはデータはそろっていますが、細かい設定は用意されていません。
これは世界が広大すぎるせいもありますが、それよりも柔軟性を重視したのが大きな理由のようです。
TRAVELLERには誰もがくつろげる、スタート地点になる場所という設定はありません。我らが地球の設定さえあいまいな歴史的事実しか紹介されておらず、TRAVELLERのメイン舞台となる世界で地球の名前を出しても、その世界の人々にはそんな星もあったかな?という程度の知識しかありません(ソロマニ自治区は有名ですが)。
TRAVELLERでは上記のようにあいまいな設定の中に、自分のキャラクターの生きる場所を見出し、その世界で生きて行く事自体を楽しむのです。
つまり細かい設定はプレイを重ねる事で出来てゆき、そうして出来た設定と世界を楽しむ事が、まさにTRAVELLERのプレイスタイルなのです。
逆に言えば、作ったばかりのキャラクターで、ショートシナリオを楽しむのは困難です。
細かい設定を用意し、キャラクターもあらかじめシナリオ向きのものを用意するという手はありますが、それでもプレイヤーがいきなりその世界に足場を築くのは難しいでしょう。
キャンペーンプレイをしないとTRAVELLERは始まらないのです。
ただしそれにもいろいろ方法があります。
要するに足場さえ築けて、その世界に生きているという実感さえつかめれば、あとは適当に遊んでいても楽しい訳で、最初の一回で足場が築けてしまえばあとは楽なものです。
例えばある星でのプレイヤーの個人的な、かつ日常生活に絡んだシナリオをプレイすれば、後は事件という形で気楽に楽しむ事が出来ます。
また一度短くてもいいからキャンペーンをやってしまえば、そのキャラクターの周辺の設定は現実味を持って出来上がるので、その後は単発シナリオも楽しめる訳です。
ここに書いている事は、実はどんなTRPGにも当てはまる事です。
ただしTRAVELLERでは最初のスタート時に、世界が広大すぎてプレイヤーが何をしていいのか分からない状態に陥りやすいのです。
普通のファンタジーRPGであれば、大体ステロタイプの生活習慣や、行動パターンが何の準備も無しでプレイヤーの脳裏に浮かんできますが、それがTRAVELLERでは難しい。そこでそのキャラクターにとってのステロタイプを作る必要があると、つまりはそういう事です。
また各プレイヤーキャラクターで、それぞれ違ったステロタイプが出来るという点が、幅広く個性が出せて、面白いところでもある訳です。
※プレイヤーの視点に基づいたプレイスタイルの詳しい説明は、こちらにあります。
ここではTRAVELLER世界の歴史をかいつまんで説明します。
プレイヤーで参加する場合には読んでいなくてもほとんど問題はありません。
レフリーを行う場合には、プレイする時代が歴史の中のどのあたりなのかを確認しておくと、プライヤーの思わぬ質問にも対処しやすいと思います。
1.遙かな過去
帝国歴?/西暦? 原生種族時代 帝国歴-400000/紀元前395000 太古種族時代 帝国歴-10011/紀元前5493 ヴィラニ人の宇宙開発 帝国歴-7980/紀元前3462 ゾダーン人の宇宙開発 帝国歴-3500/西暦1018 第1帝国の絶頂期 帝国歴-2559/西暦1959 地球人の宇宙開発 |
原生種族についてはほとんど解明しておらず、その存在さえ疑問視されています。
太古種族は、長年の研究の結果、銀河中に繁栄していたのが確認されていますが、我々の文明が築かれた頃には滅んでしまっていました。
現在(帝国歴1100年代)も生息しているドロイン人がその末裔だと言われています。
太古種族にばらまかれた人類は、ヴィラニ人、ゾダーン人をはじめとした様々な人類種として現在に至りますが、太古種族がなぜそのようなことをしたのかは不明です。
地球から持ち出されて遺伝子操作されたらしい犬の末裔は、現在ヴァルグル人として繁栄しています。
ヴィラニ人による最初の銀河帝国「ジル・シルカ(星々の大帝国)」が最も栄えていたのは西暦にして1018年頃のことです。
まだ地球では神聖ローマ帝国が始まったくらいの頃です。
この時ゾダーン人も領土を広げつつありましたが、ヴィラニ人の帝国とは距離があったのでまだ遭遇していませんでした。
我々がTRAVELLERをプレイしているいわゆる現在(西暦2000年代)はこのすぐ後ですが、見ての通りヴィラニ人やゾダーン人に比べるとあまりにも文明レベルが遅れていて、お話になりません。
ここには挙げられていませんが、他の主要な種族もこの頃恒星間文明を築きつつあります。
2.近未来
帝国歴-2460/西暦2058 地球人が太陽系の開発を終了 帝国歴-2431/西暦2087 地球人がジャンプ航法を開発 帝国歴-2422/西暦2096 地球人がヴィラニ人と接触 帝国歴-2408/西暦2110 「最初の恒星間戦争」開始 |
西暦2058年に太陽系の開発が終了というのは少し早い気がしますが、国家の統一が進んで宇宙開発に多額の予算が割かれるようになったのでしょう。
地球人が自力でジャンプ航法を開発したのは大きな事件でした。
通常自力でジャンプ航法を開発する前に他のジャンプ技術を持った種族に接触されると、その支配下に置かれてしまうケースがほとんどなのです。
地球人は最初文明や科学技術の点で他の種族に大きく出遅れていましたが、このことによって一気に肩を並べられる立場になったのです。
この辺はスタートレック世界と似ていますね。
地球人がジャンプ航法を開発し、意気揚々と銀河系へ飛び出してゆくと、そこにすでに広大な恒星間国家が存在するのを知ってショックを受けます。
そして両国の間には避けがたい軋轢が生じ、やがて全面戦争に発展してゆきます。
かたや1000年以上にわたって恒星間国家を運営してきたヴィラニ人による大帝国。かたやジャンプ航法を開発したばかりの小規模恒星間連合では勝負にならないかとも思われましたが、戦況は意外な展開を見せたのでした。
3.人類の支配から暗黒時代へ
帝国歴-2204/西暦2314 「人類の支配」の開始 帝国歴-1776/西暦2742 「人類の支配」の終わり 帝国歴-1118/西暦3400 第一次アスラン国境戦争始まる |
ヴィラニ人による大帝国は、地球連合とは比べものにならない戦力と国力を持っていましたが、帝国首都が戦場から離れすぎていたということと、官僚制が進みすぎたせいで敏速な対応が出来なくなっていたことが明暗を分けました。
当時の最速の連絡速度はジャンプ2。これは1週間に約2パーセクの速度で、ヴィラニ軍が戦場から首都まで状況を伝えるだけで1年以上もかかる有様でした。
新進気鋭の地球連合は対応の遅い帝国軍を次々とうち破り、ついには帝国首都に到達。見事勝利を収めたのです。
この戦いを再現したゲームに、GDW社から発売されていた「インペリウム」があります。
現在は国際通信社から発売されています。
こうして地球人の支配する第2帝国「人類の支配」が始まりました。
200年以上の戦争の末に手に入れた銀河帝国ですが、地球人類が支配を続けられたのは500年にも足りない期間でした。
ヴィラニ人が支配していた頃からの問題。連絡速度の遅さが帝国の維持を難しくさせていました。
新たな種族との遭遇も相次ぎ、辺境の問題は中央からの司令が届く前に次の段階に推移することを繰り返した結果、情報は真実味を失い、支配されている側は支配者の存在を知らないという始末。
やがて帝国は自然消滅してしまったのです。
次に訪れたのは暗黒時代でした。
恒星間の連絡は途絶え、国外の技術に頼っていた機械は次第に動きを止め、総じて科学技術も退化してゆきました。
地球人の多くも、もはや故郷の名前さえ忘れて日々の生活に黙殺されるような状態でした。
この頃からソロマニ人という名前が、地球人という意味を失っていったと思われます。
そんな中にも、なんとか文明の灯火を絶やさず恒星間の連絡を維持していたグループもあり、長い時間をかけて勢力を広めてゆきました。
やがてはそれが栄光の第3帝国の基盤になるのですが、国境付近では他種族も勢力を伸ばしつつあり、大きな戦争も何度もありました。
その中のアスラン国境戦争を扱ったゲームに、GDW社の「ダークネビュラ」があります。
これも現在国際通信社から発売されています。
※ダークネビュラの時代に関しては、第3帝国歴1000年頃の出来事だとする意見もあります。化夢宇留仁の間違っている可能性はかなり高いので、信用しないように(笑)。
4.第3帝国の誕生と拡大
帝国歴0/西暦4518 第3帝国の誕生 帝国歴76/西暦4594 「宥和作戦」(帝国拡大作戦)開始 帝国歴114/西暦4632 ソロマニ仮説が提唱される 帝国歴120/西暦4638 「宥和作戦」終了 |
暗黒時代の中で力をつけてきた勢力同士が覇権を競い、最終的にはクレオン・ズナスツが初代皇帝として第3帝国を建国します。
ちなみにこの頃になると西暦など誰も使っていませんし、知っている人もほんの僅かとなっています。
しかし地球に端を発する文化は第2帝国時代に充分に浸透しており、人々はそれが地球産の文化だと知らずに使用しています。
帝国歴の1年が365日なのも第2帝国の名残です。
「宥和作戦」は政治的、経済的な圧力が主な手段でしたが、必要とあれば帝国は強力な武力も駆使して領地を広げてゆきました。
「宥和作戦」は44年後に終了しますが、その後も帝国は拡大を続け、帝国歴600年頃には第1帝国と第2帝国の領土のほとんどを統合し、更にゆっくりと拡大してゆきます。
ソロマニ仮説とは、ソロマニ人は勿論のこと、ヴィラニ人やゾダーン人など、全ての人類種は地球から太古種族が持ち出した遺伝子に端を発しているという仮説で、その後の研究によってほぼ間違いないことが証明されています。
5.辺境戦争〜TRAVELLER時代
帝国歴589/西暦5107 第1次辺境戦争始まる 帝国歴604/西暦5122 第1次辺境戦争終わる。「内乱」始まる 帝国歴615/西暦5133 第2次辺境戦争始まる 帝国歴620/西暦5138 第2次辺境戦争終わる 帝国歴622/西暦5140 「内乱」終わる 帝国歴624/西暦5142 Xボート通信網が開発される 帝国歴718/西暦5236 Xボート網、帝国全土をカバー 帝国歴800/西暦5318 帝国の「超能力弾圧」始まる 帝国歴826/西暦5344 「超能力弾圧」終わる 帝国歴979/西暦5497 第3次辺境戦争始まる 帝国歴986/西暦5504 第3次辺境戦争終わる 帝国歴1082/西暦5600 第4次辺境戦争始まる 帝国歴1084/西暦5602 第4次辺境戦争終わる 帝国歴1107/西暦5625 第5次辺境戦争始まる 帝国歴1110/西暦5628 第5次辺境戦争終わる |
辺境戦争とは、帝国最辺境地帯であるスピンワードマーチ宙域が、ゾダーン連盟やソードワールズ連合、そしてヴァルグル人などの帝国外勢力によって侵攻された戦争です。
5度にわたって発生した辺境戦争は、いずれも序盤は外部勢力が帝国領内に侵攻し、その後帝国は増援部隊の到着によって盛り返し、外部勢力が後退するという展開で、その都度領土が微妙に変化しています。
また戦争終了時には辺境戦争で集結した部隊は帝国最強の戦力となり、叛乱を起こしてそのまま首都へ向かい、政府をのっとってしまうこともありました。
第1次辺境戦争時にはそれが内乱にまで発展し、短い期間で何人もの皇帝が誕生しては暗殺されました。
帝国にとっては辺境の敵軍よりも、それを迎え撃つために集結した味方の艦隊の方が脅威だったのです。
Xボート通信網と言うのは、ジャンプ4(最大6)の能力を持った小型宇宙船によるリレー方式の通信手段で、このシステムによって帝国内での通信速度は大きく改善されました。
これによって辺境と中央の連絡も改善され、結果帝国の基盤が強化されました。少なくとも第2帝国のように自然消滅してしまう心配は無くなったのです。
超能力弾圧は、辺境戦争の主な敵であるゾダーン連盟が超能力を使うために、その敵対心から表面化しました。
元々はゾダーン人も太古種族が地球から持ち出した人類種の子孫なので、帝国の人々も同じように訓練すれば超能力が使用できるのですが、戦争をきっかけに超能力=敵という図式が成り立ったのです。
表立っての弾圧は26年後に終了しますが、その後も帝国内では超能力の使用は禁じられています。
ただし敵の能力を知らないのでは話にならないので、帝国も超能力の研究を進めているのは確かでしょう。
第4次辺境戦争後の1100年あたりから、第5次辺境戦争中までの約10年間のスピンワードマーチ宙域が、最初に登場したTRAVELLERの主な舞台でした。
多種類の種族が行き来し、点在する太古種族の遺跡がミステリーを提供し、開拓や冒険の舞台も残っている辺境、そして忍びよる第5次辺境戦争の影など、時代も場所もゲームの舞台としては申し分のない魅力に富んでいました。
続編のMEGATRAVELLERが出てからも、この舞台を利用する人も多いくらいです。
第5次辺境戦争はそれを題材にしたウォーゲームもGDW社から発売されており、ゲームとしても好評でした。
日本でもホビージャパン社から日本語版が発売されていたのですが、今では入手難となっています。
6.帝国崩壊
この時代より、TRAVELLERの歴史は2つに分離します。
片方は大きな事件が発生し、帝国は内乱状態に突入します。
もう片方は事件は未然に防がれ、帝国は少々混乱はするものの、平穏な時代が続くのです。
この先の歴史はゲームのレフリー次第なのです。
もしかしたらプレイヤーキャラクターの活躍で未来が決定されるかも???
ここでは大きな事件が発生し、帝国が内乱状態に突入する歴史の方を駆け足で紹介してゆきます。
帝国歴1116/西暦5634 皇帝ストレフォン暗殺される 帝国歴1117/西暦5635 帝位継承の争いにより、帝国は崩壊 帝国歴1121/西暦5639 継承戦争の膠着化 帝国歴1124/西暦5642 無法戦争の集結 帝国歴1125/西暦5643 苦難の時代の始まり 帝国歴1130/西暦5648 最終兵器の起動 帝国歴1192/西暦5710 ハイヴ人のコンタクトチームが帝国領内に現れる 帝国歴1201/西暦5719 再建同盟の活動が本格化する |
デュリナー大公によって、ストレフォン皇帝が家族もろとも暗殺されるという大事件が発生します。
デュリナーは皇帝暗殺規約をたてに自らを皇帝に任命。その後反対勢力との戦闘に備え、集結していた自らの艦隊に帰還します。
危ないところで生き残ったストレフォンの甥のルカンも自らを皇帝に任命。それに異議を唱えた皇室会議を解散させ、デュリナーとの対決のために艦隊を集結させます。
デュリナーとルカンの2大勢力が武力衝突を繰り返している間に皇帝暗殺の報は帝国中を駆けめぐり、各地で更なる帝位継承者が名乗りを上げます。
その中には殺されたのは影武者であり、我こそは本物のストレフォンだと名乗る者までいました。
帝国中を巻き込んだ継承戦争は激しさを増し、その混乱に乗じて帝国外からの侵略も多発しました。
そうして帝国は崩壊していったのです。
このあたりの時代を舞台にしているのがMEGATRAVELLERです。
GDW社から発売され、日本でもホビージャパンから日本語版が発売されていました。
やがて各勢力は多くの戦力を失い、大規模な艦隊戦が不可能になってくると、各地でテロが横行するようになります。
これを無法戦争と呼びます。
民間の施設や住民も巻き込んだテロは帝国の産業や技術の維持に致命的なダメージを与えてゆきます。
テロが繰り返されて3年もたった頃には、各地の連絡は途絶え、技術の維持にも支障をきたし、帝国は立ち直れないほどのダメージを負っていました。
この後の苦難の時代を扱ったのが、MEGATRAVELLERのモジュールの一つ、ハードタイムスです。
デュリナーがルカンとの最終決着をつけようとしていたとき、ルカンが最終兵器を開発しているとの情報を手に入れます。
デュリナーは最終兵器を手に入れるべくルカンの研究基地を攻撃しますが、それがきっかけで最終兵器が起動してしまいます。
最終兵器の正体は知能を持ったコンピュータウィルスで、デュリナーは知らず知らずそれを本拠地に持ち帰ってしまったのです。
その後最終兵器は、勢力も人種も国境もなにもかも無視して恐るべき速度で広がってゆきます。
帝国を支えてきたXボート連絡網と、船の間で所属を確認し合うトランスポンダがウィルスの拡大に役立ってしまったのです。
最終兵器は猛威をふるい、結果銀河帝国は消滅します。
ちなみにスピンワードマーチ宙域だけは、帝国中央部との間に広大な虚無空間が存在したためにウィルスの侵入を防ぐことに成功し、なんとか文明を維持していました。
最終兵器のダメージから最初に立ち直ったのはハイヴ人でした。
彼らは独自の思考形態により、人類種の救出を試み、帝国領内の調査に訪れます。
ウィルスにのっとられた恐るべきヴァンパイアシップの存在など、復興は困難を極めますが、やがては一部の恒星間の連絡を復活させることに成功。
そして「再建同盟」が結成され、帝国の復活を賭けて活動を開始します。
この辺りの時代を舞台にしているのがトラベラー・ニュー・エラ(TNE)で、GDWから発売されていましたが、日本語版は出ないままになっています。
7.終わりに
TRAVELLERシリーズは上記で説明した以外にも、最初にTRAVELLERを作ったミラー氏自らの新シリーズ「マーク・ミラーズ・トラベラー(T4)」や、皇帝暗殺が行われなかった世界を扱うガープス・トラベラーなどが存在し、それ以外にも新たなシリーズが企画されているようです。
また日本では雷鳴社が、あらためて最初のTRAVELLERシリーズを翻訳しなおして発売しています。
ここで紹介した歴史は、あくまでゲームを楽しむための参考にするためのもので、それに従う必要はないということを覚えておいてください。
例えば皇帝暗殺事件にしても、あったということにしてもいいし、無かったことにしてもいいし、どちらでもない新たな歴史を作っても構わないのです。
目的は歴史を守ることではなく、ゲームを楽しむことなのです。
※トラベラー・ニュー・エラ(TNE)時代の解説は、馬場秀和ライブラリの「入門TNE」を参考にさせていただいたことをお断りしておきます。