焦点距離と◯◯倍ズーム
コンデジやビデオカメラの望遠能力をアピールするために宣伝文句に「◯◯倍ズーム」というのがよく使われているが、実はこの◯◯倍ズームというのはほぼ望遠能力を表せていない。
ズーム倍率というのは「望遠端の焦点距離÷広角端の焦点距離」の数字なわけだが、要するに広角端の数字が小さければ〇〇倍の数字が大きくなるわけで、必ずしも望遠能力を表していないのである。
そしてむしろズーム倍率の高さというのは光学系が大きく変化する都合上、画質と反比例するというのが現実で、本当に高性能の望遠レンズは単焦点、つまり1倍ズームなのである。
〇〇倍ズームという表現をしていたのは、本来の画角を表す数値である「35mm換算の焦点距離」というのがわかりにくいのが原因だと思う。
知人でもそんなことはわからないままに一眼レフをずっと使っている人もいる。
ただしわかってしまえば明確だし、センサーサイズの異なるカメラ間での比較もしやすくなるのでぜひ覚えておきたいところ。
少なくとも全く当てにならない〇〇倍ズームに騙されないようにしたい。
そもそも焦点距離が具体的になんの数字かというと、実はレンズの中心(光学的な中心であり、必ずしも位置的に中心というわけではない)からセンサーまでの距離であって、こちらも望遠能力を表しているものではない。
しかしセンサーには面積があり、レンズの中心は点であることから、それらを結ぶと四角錐ができる。これが焦点距離が伸びると当然鋭利な四角錐になる。撮影される画角はこの四角錐をレンズの中心で反転して延長したものなので、その結果映る範囲(画角)が狭まり、その分望遠になるという理屈なのである。
逆に焦点距離が縮まれば平べったい四角錐になり、つまり画角が広がって広角撮影ができるようになるというわけ。
ただこの部分は撮影には全く関係ないところでもあるので完全に忘れて(笑)、単に焦点距離が短ければ広角の画角になり、長ければそれだけ望遠の画角になるとだけ覚えておけば十分である。
一般的に焦点距離が35mm以下は広角、35mmから80mmあたりを標準、80mmから300mmあたりを望遠、300mm以上を超望遠と言ったりもするが、この範囲の表現にはバラツキがあるし、無理して分類にこだわる必要もない。
なので◯◯mmはこれくらいで写るというのは、自分で撮ってみて覚えるのが一番合理的である。
しかし問題は、この焦点距離がセンサーのサイズによって変化するというところ。
上記の四角錐はセンサーの四隅とレンズの中央を結んでいたわけだが、これがセンサーが小さくなると同じ焦点距離でももっと鋭利な四角錐になる。つまりそれだけ画角が狭まって望遠になるのである。
そうなると同じ画角でもセンサーのサイズによって焦点距離が異なるという、混乱させようとしているとしか思えないことになってしまい、実際そうなっているのだ。
そこで登場するのが「35mm換算」で、要するにその画角が、センサーが35mmフルサイズだったとしたらいくつの焦点距離なのかを表し、センサーのサイズに関わらず普通に比較できるようにしたものなのだ。
例えばコンデジのNikon COOLPIX P610の実際の焦点距離は4.3〜258mmだが、35mm換算にすると24〜1440mmで、広角から超ウルトラ望遠までのすごいズームレンズだということが読み取れるわけである。
またレンズ交換式カメラでは一部センサーサイズの違うカメラ間でも同じレンズをつけることができる場合があり、ニコンのレンズもその一つで、50mmのレンズをフルサイズ機につければ50mmのままだが、APS-CフォーマットであるD500につけると75mmのレンズとして使用できる。
これは要するに四角錐の底辺をもっと小さい四角に変えたら当然元より鋭利な四角錐になるということである。
ここで一般的なセンサーサイズに対する35mm換算の一覧を載せておく。
センサーサイズ |
35mm換算 |
50mmレンズの換算後の焦点距離 |
35mmフルサイズ |
×1 |
50mm |
APS-C(Canon以外) |
×1.5 |
75mm |
APS-C(Canon) |
×1.6 |
80mm |
マイクロフォーサーズ
(4/3インチ)4:3 |
×2 |
100mm |
マイクロフォーサーズ
(4/3インチ)3:2 |
×2.08 |
104mm |
1インチ |
×2.7 |
135mm |
1/1.6インチ |
×4.375 |
218.75mm |
1/1.7インチ |
×4.55 |
227.5mm |
1/2.3インチ |
×5.58 |
279mm |
1/2.5インチ |
×6 |
300mm |
最後に1つ気をつけるポイントとして、焦点距離は短い方が変化が大きいということがある。
200mmと250mmだとそんなに大きな変化は感じないが、24mmと35mmでは完全に別次元の画角になるのだ。
ここで書いたことが役に立つことはほぼ無いと思う(笑)
しかし交換レンズやカメラのスペックを見たときに、ある程度使ったときの結果をイメージできるようにはなるだろう。
なってどうする(笑)?
20240922
35mm換算表に1/2.5インチセンサーを追加。
20241003
35mm換算表に1/1.6インチセンサーを追加。
20241006
35mm換算表にマイクロフォーサーズのアスペクト比3:2を追加。
20241013 |