シャーロック・ホームズ 備忘録

様々な形態で目に触れるシャーロック・ホームズに関わる作品の、どの話がどんなだったかを記録。
完全に化夢宇留仁の個人的需要によるコンテンツ(笑)。
「最後の事件」の後の空白を忘れていて日付の設定がぐちゃぐちゃになった(笑)。
更に「最後の事件」で、1890年にワトスンがホームズの調査に協力したのは3件しかないと書かれており、混乱が増すばかり(汗)。


多分こうであろうという事件の発生順に並べている。
日付は正確でないものも多く、信憑性の高い資料が出てきたらその都度変更予定。

グロリア・スコット号

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 ホームズのカレッジ時代の唯一の友人と言えるのがヴィクター・トリヴァで、休暇を利用してノーフォークのドニソープにある彼の家に1ヶ月も滞在した。
その間にホームズはヴィクターの父親に推理ゲームを挑まれ、腕の消そうとした跡のある入れ墨のこと指摘すると、父親は衝撃を受ける。
父親はホームズに探偵として身を立てるべきだと勧め、これがホームズが私立探偵になるきっかけになったのだった。
後にそこに汚らしい船員らしい男が登場し、ヴィクターの父親は明かな動揺を示す。
 休暇を終えて約2ヶ月も有機化学の実験をしてすごしていたホームズだが、ヴィクターに助けを乞われ、再びドニソープへ。
ホームズの予想通りヴィクターの父親は船員に恐喝されており、被害者はもう一人いるらしく、父親宛に暗号の手紙が届いていた・・・。

 なんかごちゃごちゃと事件との関係の有無を差別無く書いてみたらわけが分からない文章になったな(汗)。
要するに恐喝事件で、物語の後半はヴィクターの昔話、グロリア・スコット号での体験談が語られる。
その後ホームズの活躍があるのかと思ったら、そのまま終わってしまって肩すかし。
結局ホームズは暗号の手紙を解読しただけで、事件にはなんの役にも立っていないのだ。
しかも手紙の暗号は児戯に等しく、解けない方がおかしいようなものである(汗)。

マスグレーヴ家の儀式

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 ホームズが大英博物館の近くに間借りしていた頃、まだ探偵としての名声もなく、たまにやってくる仕事も学生時代のツテが多かった。
この時も依頼人はカレッジ時代を一緒にすごしたレジナルド・マスグレーヴという男である。
 彼の家はイギリス屈指の名門で、建物も16世紀頃まで遡れる古さだった。
その家で執事が行方をくらまし、続いて執事と一時は恋仲だった女中も姿を消した。
ただ姿を消したというなら出ていっただけですむだろうが、執事の荷物はそっくり残っていたのだった・・・。
 執事が行方をくらます少し前に観ていたというマスグレーヴ家に昔から伝わる儀式書の内容に興味をもったホームズは、意味のないものだと渋るレジナルドを説得して儀式書を解読。
それがマスグレーヴ家に代々伝わる宝物の場所を示していることに気付くのだった・・・。

 名作。
シチュエーションが実に興味深く作られていて、子供心を刺激する。
しかしビジュアルイメージが大きく影響する内容なので、グラナダTV版が輪をかけて面白かったように記憶している。

緋色の研究

ちくま文庫/詳注版シャーロック・ホームズ全集2
 日時不明。おそらく1881年はじめ?
 インドで腕を負傷し、イギリスに戻って充分ではない支給金を使って生きていたが、このままでは破綻するのが明らかだったので、ホテルを引き払って下宿を見つけることにした。
そんな彼に昔の友人が声をかけ、共同で部屋を借りる人を探している男がいると教えてくれる。
早速その男に会ってみたが、なんとも奇妙な男だった。ホームズである。
お互いがお互いの条件を呑み(その中にはワトスンがブルドッグの子犬を飼っているというのも含まれる)、早速二人はベーカー街221Bに引っ越したのだった。
 共同生活が始まってからというもの、まだ体調が思わしくないワトスンは他にすることもなく、興味深いルームメイトを観察していた。
そもそも彼がなにをして生計を立てているのかが分からなかった。様々な知識を持ち、訪問客も多いようなのだが、そこに一貫性が見いだせないのだ。
 3月4日。
 朝食の席で、ホームズが雑誌に寄稿した文章を巡って議論する内に、とうとう彼の職業が判明した。
彼は捜査に詰まった警察や、私立探偵、そして依頼者の相談を受ける探偵コンサルタントだったのだ。
彼の推理能力を信用できないワトスンは、ちょうど窓の下をうろついていた男をホームズが海兵隊の退役兵曹だと言い、偶然にもその男が部屋に手紙を届けに来たので、ホームズの化けの皮をはぐチャンスだと喜ぶ。
しかし男はホームズの推理したとおりの経歴だった。
すっかり感心したワトスンは、その手紙によって始まった事件の調査にもついてゆくことになった。
 事件は誰も住んでいない空き家の中で、立派な服装の紳士の死体が発見されたというもので、部屋の壁にはRACHEと書かれており、それはドイツ語で「復讐」という意味だった。
また死体の下からは美しい指輪が発見された。
レストレードとグレグソンが呆れて見ている中、ホームズは現場を詳細に調べ、犯人の姿形を推理して見せた。
更に死体を発見した警官にも話を聞き、犯人が一度現場に戻っていたことを知り、ホームズは指輪を探しに来たのだと考えた。
 おそらく犯人は指輪を無くした場所は確定できていないと予測し、新聞で落とし物として広告を出した。
やってきたのは予想に反して老婆だった。
指輪を渡し、彼女を尾行するホームズだが、見事にまかれてしまい、悔しがる。どうやら犯人には身軽で変装の名人である協力者がいたらしい。
 ホームズは刑事警察ベーカー街分隊に情報収集に走らせる。
またグレグスンが犯人を捕まえたと報告してきたが、ホームズはそれが誤認逮捕であると分かったが、捕まった男が事件に関係しているのも確実だった。
やがてそこにレストレードも現れ、彼らが犯人であると仮定していた被害者の秘書が死体で見つかったことを告げ、少なくとも刑事二人とワトスンにとっては調査は振り出しに戻ってしまった。
ホームズは秘書の側に置いてあったという小箱を見、その中に錠剤が入っているのを見た。
下宿のおかみ(おそらくハドスンさん)の飼っている病気で死ぬのを待つばかりとなっていたテリアに、二つ入っていた錠剤の内の一つを飲ませたが変化が無く、ホームズは自分の推理に破綻がきたしたかと不安になるが、もう一つの方を飲ませたらテリアは死に、彼は推理の正しさを確信した。
ホームズの様子を見て、犯人が分かったのならすぐに教えてくれと言う他の3人だが、ホームズは慌てない。
そこにウィギンズ少年が現れ、馬車を連れてきたと告げた。
ホームズは荷物を運んでもらうからと御者を呼び、いったいどこに出かける気なのかと3人がいぶかしむ中、新型の手錠がいかに役に立つかを説明し始める。
更に困惑する3人だが、ホームズは御者に素早く手錠をはめ、目を輝かせて叫んだ。
「諸君!イノック・ドレッバーおよびジョゼフ・スタンガソン殺害の犯人、ジェファソン・ホープ氏をご紹介しよう!」
 ホームズは最初の現場を見た時点で馬車の轍の跡が御者がついていなかったために不規則なものになっていると推理し、事件に御者が深く関わっていると判断していた。
また殺されたドレッバーの過去を調べ、ジェファソン・ホープという男に命を狙われているという情報を手にしていたのだ。
そしてベーカー街特務隊に命じて、ジェファソン・ホープという名の御者の馬車を呼んでくるように手配していたのだった。
 ホープは大動脈瘤で死にかけており、急いで事情を聞けば、アメリカでのモルモン教徒との対立で、婚約者とその養父を殺された復讐をしていたのだと分かった・・・。

 なにしろ第1作だし、ホームズとワトスンの出会いが描かれているのであるから面白くないわけがない。
しかしミステリーとしては破綻しているところも多い。
例によって後半に語られる過去の物語も型破りだが、それよりも問題は最後の犯人を捕まえた方法である。
犯人は指輪の回収時に、ベーカー街の住所を知っていたのだ。尾行までされて怪しいのは分かっているのに、馬車を呼ばれてノコノコとやってくるのはおかしい。
まあうっかりしていたのだとか(笑)、すでに目的は果たしたので捕まってもいいと思っていたとかの解釈は可能だが、ホームズの手段に問題があるのは間違いない。
 もう一つの問題点は指輪を取りに来た犯人の協力者である。
ホームズをも欺く変装の名人で、更にホームズの尾行をまいてしまう実力者である彼については結局謎のままである。
これが普通のゴロツキとかなら問題は無いのだが、上記の通りおそらくこの作品中でも屈指の実力者である男の説明が無いのは変である。
だいたい犯人のホープはイギリスにわたってきてからの期間も短く、仲間など作る暇も金も無かった筈なのだ。
本書の注釈ではおそらくモリアーティの組織の者だろうとあり、それは納得できる意見ではあるが、それでも本作のミステリーとしての欠陥なのは間違いない。

 ホープの思い出を語るアメリカでの過去の出来事は実に陰惨な話で、後味の悪さは「恐怖の谷」を遙かに上回る。
ホープの復讐心を正当化した上で説明するという意図は分かるのだが、エンターティメント作品としてどうかと思うところでもある。
要するにホームズの活躍とはまったく関わりのない話なのだ。

 上でミステリーとしての問題点を挙げたが、そうではない問題点も散見される。
まず有名なワトスンの負傷だが、本作では肩を撃たれているのに、その後の作品では脚になっているのだ。
まあこれに関しては本作のみで考えれば問題ではない。
 もう一つがワトスンの飼っていたというブルドッグの子犬である。
彼に関しての記述はその一箇所のみで、その後一切語られないのだ。本作中でも、他の全ての作品を含めてもである。
いったいどこへ行ってしまったのだろうか。
研究家の間では、ホームズの射撃練習の的になったなどという無茶な話しもあるのだが(笑)、化夢宇留仁は犬の存在そのものが、これから同居するかもしれない男の反応を見るためのワトスンの嘘だったのではないかと思う。
勿論事実はドイルが忘れていただけなのは間違いないと思うが(笑)。
 ※これに関しては湖の隣人さんより、「ブルドッグの子犬を飼っています」と言うのは、「私はかんしゃく持ちです」という意味だという説があるとのご指摘があった。
化夢宇留仁もなにかで読んだ覚えがあったので、あらためて本編のその部分を読み返してみると、確かにそれが一番筋の通る解釈のように思えた。
ペットに関しては共同生活の最も大きな問題の筈なのに、ホームズが気にもとめていないのもそれを裏付けているように見える。
ただしワトスンがかんしゃく持ちでは無いのはその後の内容で判明するので(ホームズとずっと仲がいいのがなによりの証拠である/笑)、予防線だったか、ホームズの反応を見るためのセリフだったのかもしれない。
でも解釈としては実際に子犬が存在していた案の方が好きだ。面白いから(笑)。

 ちなみに本作のみ、所有しているはずの新潮文庫版を紛失してしまったので、ちくま文庫の全集であらためて読んだ。

まだらの紐

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1883年4月はじめの朝、ホームズとワトソンは依頼人が訪ねてきたとハドソンさんに起こされる。
依頼人はサリー州に住むロイロット家の娘で、2年前に双子の姉を亡くしていた。
姉が亡くなる前に聞こえたと言っていた口笛が自分にも聞こえ、恐怖に震えて相談に来たのだった。
口笛が聞こえたのは真夜中のことで、彼女は自分の部屋が工事中だったため、姉の部屋で寝泊まりしていた。
 彼女が帰ったすぐ後に、新たな訪問者が。
その大男は彼女の継父であるロイロット博士で、ホームズをののしり、事件へ介入しないように脅していった。
 背景を聞き、更に現場を調査したホームズは、問題の部屋にとても変わった点がいくつもあるのを発見し・・・。

 代表的なエピソードの一つで、謎めいた部屋の描写が面白い。
トリックとしてはまあ悪くないのだが、それにしても当時の検死官は目が見えていたのかと疑問に思う。
普通気付くだろ(笑)。

四つの署名

新潮文庫/四つの署名/延原謙訳
 1886年?9月。
 退屈のあまりコカインの7%溶液を毎日注射しているホームズにうんざりしていたワトスンだが、美しい依頼人がやってきたので安心した上に一目惚れしてしまう(笑)。
依頼人メアリー・モースタンの父はインドの連隊の先任大尉で、1878年12月3日に休暇でイギリスに帰ってはきたものの、そのまま行方不明になってしまった。
その後1882年の5月4日に、新聞に彼女の住所が知りたいという文面が載り、教えてやると1年に一度高価な真珠が届くようになった。
そして今朝になり、呼び出しの手紙が来るに及んで悩んだ挙げ句に相談に来たのだった。
 手紙の差出人のサディアス・ショルトーは、メアリーの父の親友ジョン・ソルトーの息子で、真珠を送っていたのも彼だった。
彼の父は少し前に亡くなり、その時にインドで見つけた財宝のことと、その所有権の半分はモースタン大尉にもあるので、その子供に分けてやって欲しいと言い、真珠を出したのだった。
サディアスには双子の兄がおり、兄の方は遺産を見も知らない人間に分けるのを嫌がったが、心優しい弟は真珠を彼女のところに送っていたのだった。
 サディアスの兄バーソロミューに会いに行った一行だが、なんと彼は殺されており、そこには不思議な四つの署名の書かれた紙が落ちていた。
それはジョン・ショルトーが死んだ時にも胸にピンでつけられていたもので、さらにはメアリーの父の遺品の中にも同じものがあった。
 ホームズが殺人者の形跡を調べた結果、一人は片足が木の義足の男で、もう一人は非常に背の低い毒矢を使う不思議な人物だと判明。
犬のトビイを使って貸し船屋にたどり着き、犯人達がテムズ川のどこかにいるという見当をつけたホームズは、ベーカー街特務隊を動員してその行方を探るが・・・。

 面白い。推理やトリックにそう変わったところがあるわけではないが、登場するキャラクターが誰も彼も生き生きとしていて、最後まで退屈しないで読める。
最後は長編の例によってのパターンで、犯人と被害者を巡る過去の出来事が語られるが、短いし内容も興味深いので苦にならない。
 ワトスンは最初からメアリー嬢に夢中で、中学生のような恋の悩みに陥ったりするのが面白い。
最後には結婚が決まってホームズに渋い顔をされているが(笑)。
 日付はどうもアテにならない(汗)。
1878年が10年前の出来事として語られているが、そのまま1888年の出来事とすると、ワトスンの結婚より後の事件になってしまうのだ。
つまりここがワトスンの2度目の結婚だという根拠になるのだろうが。

ライゲートの大地主

新潮文庫/シャーロック・ホームズの叡智/延原謙訳
 1887年4月中旬。
 ホームズが過労で倒れたしばらく後、ワトソンの勧めで二人で保養に向かったのがサリー州ライゲートだった。
しかしのんびりと過ごす予定は、近所で殺人事件が発生したことで、崩れてしまう。
現場はこの地方で1、2を争う大地主のカニンガム家で、どうやら夜盗に御者が撃ち殺されたらしかった。
しかしホームズは、カニンガム家の人間の証言と現場の状況が食い違うことを発見し・・・。

 見事な推理もさることながら、このエピソードではホームズが犯人を追いつめるトリックがいくつか出てきて面白い。
聞かれたくないことが話題になりそうになると、「うっ」とか言ってぶっ倒れてみたり(笑)、わざと書類を書き間違えて文字を書かせたり・・・。
ホームズの活躍が満喫できる逸品。

花嫁失踪事件

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1887年のワトソンが結婚する2〜3週間前。
結婚した直後に花嫁が失踪してしまった貴族の依頼を受けたホームズは、新聞記事と貴族の話だけで部屋から一歩も出ずに事件のあらましを理解し、失踪した花嫁と貴族をひき会わせる。
実は花嫁が死んだと思っていた前の婚約者が生きており・・・。
 なんぼなんでもあれだけの情報だけで断定するのはどうかと思う。まあいつものことだが(汗)。

株式仲買店員

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 1887年6月?
 結婚後すぐ開業して3ヶ月がたった頃、ホームズがやってきて例によってワトスンを引っ張り出す。
今回の依頼人はホール・パイクロフトという若い金融業者で、最近新しい職場を得たのだが、そこで顔を合わした人間は2人いたのだが、どうやらそれが一人二役をしているらしいと悟り、おかしな事件に巻き込まれているのではと不安に思っていた。
 事件はホームズ達が現場にたどり着いたところで、勝手に終息してしまい、ホームズはまったくなにもしていない。

 少し「赤髪組合」と似たシチュエーション。必要としていたのは依頼主の留守ではなく、彼の筆跡と目的の場所に近づけないことだが。
 事件発生の時期が非常に曖昧というか混乱をきたしている。
ワトスンは結婚後すぐに開業し、それから3ヶ月はベーカー街に顔を出す暇も無かったと言っているが、結婚したのが3月だとすると「ライゲートの大地主」事件の時期がはさまってしまう。
またこの結婚相手はホームズが「四つの署名」事件に関わっていたことを示しているので、最初の結婚なのは間違いないのだ。
 もう一つ興味深いのは、当時の医者の収入の高さ。
冒頭で、ワトスンが買い取った医院の前の持ち主は昔は年1200ポンドもの収入があったが、それが年300ポンドまで下がってしまったと書かれている。
ところが本編の依頼主は前の職場で週3ポンド(年150ポンド程度)貰っていたので、70ポンドほども貯金が出来たと言っている。
つまり年150ポンドでもそこそこ悪くない収入なのである。
やはり当時から医者の収入は桁違いだったらしいのがうかがえて興味深い。

背の曲がった男

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 1887年7〜8月?
 深夜のワトスン宅に珍しくホームズが訪ねてきて、例によって事件に付き合わされることに。
オルダー・ショットのロイヤル・マロウズ連隊のバークレイ大佐が妻の目の前で殺された。
現状では夫人が容疑者として調べられそうな流れだが、ホームズはそこに第三者の存在を確信。
やがて夫人の友人から証言をとり、事件には背の曲がった男と奇妙な動物が関係しているのをつきとめる。
背の曲がった男の住居をつきとめ、行ってみると男は悲惨な昔話を始めた・・・。

 結局ワトスンが合流してからは、背の曲がった男の話を聞いただけである。
ホームズは事件の最後の段階をワトスンに見てほしかっただけなのだろう(笑)。
ちなみにデヴィッドがダビデだというのは、日本語ではトリックになっているが、原語ではどうなのだろう???
日付はワトスン結婚後2〜3ヶ月たった夏の夜という記述による。

オレンジの種五つ

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1887年9月下旬の彼岸嵐が吹き荒れていた日の深夜。サセックスからの依頼人がやってくる。
彼の依頼は祖父と父親がそれぞれ5つのオレンジの種を送りつけられてから変死し、その後自分にも種が送られてきたという謎めいている上に不吉極まりないものだった・・・。

 封筒にはご丁寧にK.K.Kと書かれており、クー・クラックス・クラン絡みと言うことはすぐに予想がつくが、ワトソンが知らないところを見ると当時はマイナーな組織だったらしい。
それにしてもこの話はホームズの知識だけで推理が進む上に依頼人は殺されてしまい、犯人グループも捕まらないというなんとも収まりの悪い結末になっている。
せめてホームズが依頼人をちゃんと守ってやってほしかった。
個人的にはアイリーンの事件よりもホームズの失敗度は遙かに高い最悪の事件だと思う。
小説としても面白くないし。
 ちなみにすでにワトソンは結婚している。

恐怖の谷

新潮文庫/恐怖の谷/延原謙訳
 多分1887年秋か冬。
 ある朝ホームズは暗号の手紙をワトソンと相談しながら解読。
それはモリアーティの部下の一人だがある程度ホームズに懐柔されているポーロックからで、バールストン村のダグラスという男の命が狙われているという内容だった。
そこにやって来たアレック・マクドナルド警部は、その文面を見て驚愕する。彼は今さっきダグラスという人物が殺されたというニュースを持ってきたのだ。
 警部と共にバールストン村へ向かったホームズとワトソンは、現場が古い建物で、死体は強力な散弾銃で至近距離から顔を撃たれているのを確認。
怪しい自転車に乗った男の情報があり、警部はその男を捜すのにやっきになるが、ホームズはやめるように言う。彼は事件のトリックを見破りつつあった。
 やがて事件は解決されるが、事の起こりは12年前のアメリカにあった・・・。

 1914年9月から1915年5月までストランド誌に連載された、ホームズシリーズ最後の長編。
ホームズの長編でよくある2部構成になっているが、他の作品と違ってホームズの出てこない第2部も実に良くできていて面白い。
事件発生時が秋か冬というのは、本編中でこの頃は夜が長く、4時半には日が暮れると書かれているため。
 訳者の解説にあるが、この事件は「最後の事件」よりも前のことなのに、ワトソンが「最後の事件」時にモリアーティの名前を忘れているのはドイル痛恨のミスと言える。
ちゃんと昔の作品を読み返してから書いてほしいものだ(笑)。

ボヘミアの醜聞

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1888年3月20日夜。
 最初の結婚をしてホームズとの共同生活から離れ、再び開業医としての生活を送っていたワトスン博士が、往診の帰り道にベーカー街の近くに来たので、久しぶりに221Bに寄ってみた。
するとホームズは一通の手紙について思案しており、ワトスンに協力を要請する。
手紙はもうそろそろ現れるであろう依頼人の立場を保証する内容で、やってきた依頼人はマスクをつけた大男だった。
彼は実はボヘミア王国の国王で、昔付き合っていたアイリーン・アドラーという女性の元にある、一緒に写っている写真を取り戻して欲しいという。彼は近々結婚するので過去を清算する必要があったのだ。
巧みな変装術で情報を収集し、火事騒ぎで写真の隠し場所を見つけだすホームズだが、アイリーンはもう一枚上手だった・・・。

 アイリーンに一杯食わされたホームズが、屈辱と嫉妬心により国王に皮肉を言い、冷たい態度を示すのが楽しい。
ホームズシリーズの中でも最も彼の感情が顕わになった話だと思う。

花婿失踪事件

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 ホームズとワトソンが暖炉をはさんでいるところにやってきた依頼主の女性は、婚約者が挙式当日に行方不明になったので探して欲しいと言う。
彼女が近眼なこと。お金を持っていること。彼女が結婚すると大きく収入が削られる継父の存在などの話を聞いただけで、ホームズは事件のあらましを理解する。
実は継父が婚約者に変装して結婚の約束をし、行方不明になっても忘れないでと釘を刺して彼女の結婚を遅らせる計画だった・・・て、なんぼなんでも滅茶苦茶では(笑)?
気付けよ(笑)!

 事件の日時は14日土曜日としか記されていないが、アイリーンの事件よりも後のことだと描かれているし、この作品が1891年9月にストランド誌に掲載されたことから考えて、1891年の冬2月、3月のどれかの14日の可能性が高い(1891年で14日が土曜日なのは2、3、11月のみなのだ)。
・・・と、思ったがこの年は2〜3月はホームズはフランスに行っているし、4月には滝壺に落ちていたのだった(笑)。
1888年かな?

瀕死の探偵

新潮文庫/シャーロック・ホームズ最後の挨拶/延原謙訳
 日時不明だが、「ワトスンの結婚後2年目のある日」らしい。
 ワトスンの診療所に、ハドスン夫人が訪ねてきてホームズの余命は幾ばくもないと伝えたので、ワトスンはびっくり仰天。大慌てでベーカー街へ向かう。
 行ってみればホームズは確かにやせ衰えて顔色も死人のようで、しかも接触感染するアジア産の特殊な病気だと言ってワトスンに近寄らせもしない。
やがては海が牡蠣でいっぱいにならないのはおかしいなどと譫言を言いだす始末。
そして見かけた覚えのない小箱を触ると、激怒した。
なんとか説き伏せて専門の医者を呼ぶことに同意させると、ホームズはカルヴァートン・スミスという男のみがこの病気を治せる可能性があると言ったので、ワトスンはスミスをはんば無理矢理連れてくる。
先に戻っていたワトスンがホームズの指示通り隠れて二人の会話を聞いていると、最近同じ病気で死んだ者がいるらしかった・・・。

 化夢宇留仁が子供の頃に読んで非常に印象的だった作品。
一時期はホームズと言えばこの作品しか思い浮かばず、とにかく瀕死な奴というイメージだった(笑)。
少々強引なところはあるものの、ホームズの譫言が楽しい逸品。
 1913年12月 ストランド。

バスカヴィル家の犬

新潮文庫/バスカヴィル家の犬/延原謙訳
 10月はじめの朝早く、珍しくホームズがワトスンより早く起きて、食卓に陣取っていた。
昨日の客が忘れていったステッキについて推理談義をしているところに、犬を連れた持ち主がやってくる。
持ち主はジェームズ・モーティマーという若い医者で、頭蓋骨マニアの変わった男だった。
彼はデヴォンシャーのバスカヴィル家でこの6月に亡くなったチャールズ・バスカヴィル卿についてと、バスカヴィル家に伝わる呪われた巨大な犬の伝説を話して聞かせた上で、今度バスケヴィル家をヘンリー・バスカヴィル卿が相続するので、その前に一連の事件を調査して欲しいと話した。と言うのも、チャールズ卿が心臓発作で亡くなったらしい並木道で、彼は大きな犬の足跡を見つけていたのだった。
 一晩煙草をふかして考えたホームズは、翌日ヘンリー卿と会うが、彼の靴が片一方無くなったのと、不思議な警告状が届いていたのを聞いて俄然興味を深める。
更に帰ってゆく彼らの後をつける馬車がいるのに気付き、慌てて追いかけるが見失ってしまう。
午後に卿の泊まっているホテルに行くと、また靴が片一方盗まれたと言って騒いでいた。
前に盗まれたのはまだはいたことのない新品で、今度のは履き古したものだった。
警告状はタイムズ紙の経済欄を切り抜いたものだと見極め、しかもペンとインクの状態が悪いことからホテルで書かれたものだと推測したホームズは、カートライトという少年にチャリング・クロス界隈のホテル全ての紙くずを当たって、切り抜かれている新聞を探すように指示。
しかし効果は上がらず、馬車のナンバーから問い合わせた御者と話しも出来たが、乗せた男はシャーロック・ホームズと名乗ったと聞いてあきれかえる。
相手はホームズを相手に、3度も一杯食わせたのだ。

 ホームズは手が離せないので、件の屋敷にはヘンリー卿とモーティマーについてゆくのはワトスン一人となった。
屋敷につく前に警察の姿があったので話を聞けば、凶悪な人殺しが脱獄したのだと言う。
 バスカヴィル屋敷には羊のバリモア夫妻と御者がおり、近くの沼沢地にはステープルトンという博物学者とその妹、更に少し離れたところには告訴マニアのフランクランド老が住んでいた。
 バリモアは人相が馬車の男と似ているということで、ホームズは本人が受け取るようにして電報を出していたが、実はバリモアの妻が受け取っていたことが分かり、アリバイは確定しなかった。
 ワトスンが道々ステープルトンと話をしていると、どこからか恐ろしげな遠吠えのようなものが聞こえてきた。それが村人達の恐れているバスカヴィルの犬の鳴き声らしい。ステープルトンは怪鳥の泣き声かもしれないと言っていた。
また彼の妹は彼にはまったく似ておらず、大変美しかった。
 夜中にはバリモアの妻がすすり泣いている声が聞こえてきた。
更にバリモアが夜中にこっそりうろついているのを知ったワトスンは、ヘンリー卿とともにそれを尋問し、実は彼の妻の弟が脱獄囚であり、夜中に食料を与えていたと分かった。
バリモアは彼を海外に逃がすように手配しており、ヘンリー卿に貰ったお古の服も脱獄囚に渡していた。
ワトスンとヘンリー卿は脱獄囚を捕まえるために、古代人の遺跡が並ぶ地帯へ。
そこで脱獄囚の住処は見つけるが、逃げられてしまう。
その時ワトスンは、月を背にして大きな岩の上に立つ長身で痩せ形の怪しい男を発見する。
顔は見えなかったが、その男が馬車の男と同一人物だろうと見当をつけるワトスンだが・・・。

 印象深いシーンが多いので長くなった。
実に面白い作品である。本作以外のホームズシリーズの長編は、現在と過去の2部構成になっていて、いいところで過去の話になってしまって肩すかしの感があるのだが、本作は最初から最後まで同一時間軸で進み、その分読み応えも一番である。
 前半のロンドンでの件では、ホームズの上手を行く謎の男の描き方が見事で、まさに相手にとって不足無し。描写された能力の上ではホームズシリーズ中最強の敵だろう。
次がミルヴァートン、つぎがモリアーティーというところか。
設定された能力では勿論モリアーティーが最強なのだが。
また前半出てくる情報で、どうやら犯人が被害者やその近所の人々に近しい人間だと分かるので、後半の犯人探しが沼沢地という密室を呈して更に盛り上がるように出来ている。
 発生年は分からなかったが、「シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯」では1888年となっていた。ただしこの本では発生月が11月となっている。文中でのワトスンの手紙が10月15日あたりなのに、そうしているのは例によって曜日や天候などから割り出したものなのだろう。
ちなみに本文中で、チャールズ卿が殺されたあたり(6月)は、ホームズはバチカンでの事件で忙しかったと言及されている。

ボスコム谷の惨劇

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 ワトソンと妻が朝食をとっているところに、ホームズからの電報が。
例によってのお誘いに、妻の勧めもあっていそいそと出かけてゆくワトソン。
 今回ホームズが抱えている事件は、田舎町ボスコム谷のボスコム沼で起きた殺人事件であり、被害者の息子が逮捕されていたが、ホームズは誤認逮捕ではないかと疑っていたのだった。
それまでの経過を聞いたワトソンも、状況証拠からはその息子が犯人としか思えなかったが、現場に着いたホームズは新たな証拠を次々と見つけだし・・・。

 被害者はオーストラリア帰りの老人で、その当時の出来事が今回の事件に大きく関わってくる。ホームズシリーズでよくある外国での過去の出来事がイギリスで新たな事件を引き起こすというパターンである。レストレードも出てくる。
最初に読んだときは推理小説としてはルール違反だと思ったが、今回読み直したらそうでもなかった。
ただしネズミの件はもう少し前振りがあってもいいと思う。トリックに考えが及んでも、オーストラリアのヴィクトリア州の知識がないとゴールにたどり着けない。
一番の疑問点は最後の息子の無罪を証明しつつ、真犯人が捕まらないようにした方法で、まったく言及されていないのだが、これは実に困難としか言いようがない。
なにしろ息子への疑いを晴らすためには新たな証拠を示さなければならず、しかしその証拠は全て真犯人を指し示しているのである。
一体どういう風に収拾したのであろうか。
 また冒頭ではワトソンの奥さんが「四つの署名」で関わった女性だとはっきり示唆されている。すごく仲が良さそうだが、どうして別れてしまうのだろうか。
ちなみにこの時のワトソンの寝室は、右側に窓があるというミニ知識も出てくる(笑)。
 日付はおそらく1889年6月6日〜8日。
文中で6月3日が月曜日とあるが、1880年代で6月3日が月曜日なのは1889年のみ。1895年も6月3日は月曜日だが、この作品がストランド誌に発表されたのが1891年10月なのを考えれば、日付を未来にしたとは考えにくい。
また同じく6月3日を「この月曜日」と言っていることから、その週内での出来事だと思われる。

唇の捻れた男

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1889年6月。ワトソンとその妻がそろそろ寝ようかという頃、突然の来客があった。
それは妻の学校時代からの友人だった。
話を聞けば彼女の夫が阿片窟に行ったきり戻らないと言うので、ワトソンが迎えに行くことに。
彼は阿片窟で意外な人物と遭遇する。それは潜入捜査中のホームズであった。
ホームズはここで衣類などを残して行方不明になった男の手がかりを探していたのである。
男が行方不明になった部屋には、唇の捻れた汚い乞食がいた・・・。

 例によってホームズに捜査に引っ張り込まれるワトソン。
 トリックはともかく、行方不明になった男が奥さんに目撃されるところの挙動がおかしい。ありそうと言えばありそうなのだが、小説としてはやはりおかしいと思う。

黄いろい顔

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 ワトスンとホームズが珍しく散歩をしている間に来客があった。
彼はホップ商で、収入には余裕があり、最近はノーバリに小ぎれいな家を借りて3年前に結婚した妻と二人で住んでいた。
しかし近所の別荘に新たな家族が引っ越してきてからというもの、妻の様子がおかしくなった。最初は彼に100ポンドもの大金をねだり、次にはその別荘に行き来しているのが分かったのだ。
またその別荘の2階から覗いていた不気味な黄色い顔も彼の不安をかき立てていたのだ。
 ホームズは奥さんが恐喝されているのだと考え、調査を進めようとするが、それは大きな見当違いだった・・・。

 H・P・ラヴクラフトよりも古く格式張った世界に生きていたドイルが、人種差別を否定しているのは素晴らしい・・・と、言うよりラヴクラフトが異常なのだろう(笑)。
 ホームズはこの事件のあまりの見当違いにショックを受け、今後力を過信したり骨折りを惜しむようなことがあったら耳元で「ノーバリ」と囁いてくれとワトスンに頼むのだが、果たしてこの後そういう機会があったのだろうか。
 この話も「最後の事件」より前らしい。 1889年?

技師の親指

新潮文庫/シャーロック・ホームズの叡智/延原謙訳
 1889年の夏。ワトソンの結婚後間もないことと書かれている。
 開業していたワトソンのところに、お馴染みの客である鉄道の車掌が患者を連れてくる。
なんと彼の片手の親指は根本から切断されていた。
水力技師である彼は、昨晩恐ろしい体験をして、今朝命からがらここにたどり着いたのだ。
ワトソンに紹介されてホームズのところにやってきた彼の話は奇怪きわまるものだったが、巨大な圧縮機と極端な秘密主義のドイツ人というだけでホームズはだいたいの見当をつけていた・・・。

 結局ホームズはほとんど役に立っていない。
それにしてもワトソンの前の奥さんはどうなったんだ?

海軍条約文書事件

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 ワトスン結婚直後の7月。
この7月には他に「第二の汚点」と「疲労せる船長」という2つの興味深い事件があったらしい。
すると「技師の親指」事件は6月か8月?
関係ないが「第二の汚点」事件ではホームズがフランスに行ったか、フランスから探偵がやってきたらしい。
 ワトスンの学校時代の友人パーシイ・フェルプスからホームズに援助を求める手紙が届く。
彼は海軍の重要な文書の写しを任されていたのだが、ほんの少し目を離した内に盗まれてしまったのだ。
あまりのショックに脳炎になって9ヶ月も寝たきりになってからの依頼だったが、ホームズはまだ光明が残っているのに気付いていた・・・。

 なかなかトリッキーな話でグイグイ引き込まれるが、オチは意外にあっさりしている。
登場する人物全部が怪しいのが面白い。
1893年10〜11月ストランド誌発表。

ボール箱

新潮文庫/シャーロック・ホームズ最後の挨拶/延原謙訳
 発生年不明。焼け付くように暑い8月のある日。
 ホームズが例によってワトスンに読み上げを頼んだ新聞記事には、なんとも奇怪な事件が記されていた。
 クロイドンのクロス街に住むミス・スーザン・カッシングのところにボール箱が届き、なんとその中に人間の耳が二つ現れたのだ。
調査を進める内、彼女には二人の妹がおり、その内一人は前まで一緒に住んでいたということが分かった・・・。

 真相は分かるが誰も幸せにならない。陰惨だし、あまり面白い話ではない。
冒頭にホームズがワトスンの考えていることを当てるシーンがあるが、ここは暇なときのワトスンの様子がよく分かって実に面白い。
それにしても肉親の耳ってほんとに似てるのかな?
 1893年1月 ストランド。

ギリシャ語通訳

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 ある夏の水曜日。遺伝について話していた流れで、ワトスンは初めてホームズに兄がいることを知らされる。
それもロンドンにいるらしい。
せっかくの機会なので会いに行くことになり、ディオゲンス・クラブという一風変わったクラブでホームズの兄マイクロフトと会う。
マイクロフトはちょうど相談を受けている事件を委託した。
 その事件の依頼人はメラスというギリシャ人で、通訳を生業にしていた。
彼は2日前の月曜日、目隠しをされて連れて行かれた場所で、捕らわれたギリシャ人の通訳をさせられたのだ・・・。

 結局メラスはひどい目に合い、捕らわれていたギリシャ人は死んでしまい、犯人は死んだと分かるだけで、捕まらない。
なんとも後味の悪い話である。マイクロフトは出てくるだけでワクワクするのだが。
1893年9月ストランド誌発表。

入院患者

新潮文庫/シャーロック・ホームズの思い出/延原謙訳
 10月のうっとおしい雨の日。1889年?
 晩になって雨も止み、そよ風が吹いてきたのを機に、散歩に出るワトスンとホームズ。
2人がベーカー街に帰ってくると、家の前に4輪のタクシー馬車が停まっていた。
その依頼人はパーシイ・トリヴェリヤンという医者で、能力はあったが開業するお金が無く、困っているところに助け船を出した人物がいた。
その男は開業資金と場所を提供する代わりに、収入の1/3と自分も心臓が弱いので入院扱いで同じ建物に住むという条件を出し、パーシイはそれを飲んでいままでやってきた。
しかし最近になって1人の患者と付き添いが来てから、様子がおかしいのだと言う・・・。
 一度は男と面会するホームズだが、彼が本当のことをしゃべろうとしないので、依頼を断る。
だが翌朝7時半に、依頼人にぜひ来て欲しいと言われて行ってみると、問題の男は首吊り自殺をしていたのだった。
ホームズは現場を調べ、それが殺人だと断定する。

 ホームズの足跡と葉巻の灰の観察眼が冴える。
しかしオチはいいとして、男が依頼人にあのような条件を提示した理由が希薄なような気がする。
 ストランド誌に1893年8月に掲載された。

青いガーネット

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 12月27日朝。ワトソンがホームズのところをたずねると、彼は汚いフェルトの帽子を検査しているところだった。
話を聞けば少し前までは見事な鵞鳥もあったのだと言う。
その帽子と鵞鳥は喧嘩しているところを守衛に見つかり、逃げ出した男が落としていったものだった。
このままでは傷んでしまうので、鵞鳥は守衛が持って帰ったのだが、なんと餌袋の中から最近盗まれて騒ぎになっていた見事なガーネットが出てきたのだった・・・。

 珍しく巻き込まれ型のストーリー。
あまりに運の作用が大きすぎてどうかとも思うが、たまにはこんな話があってもいい。
ストランド誌に発表されたのが1892年の1月なので、多分1891年のクリスマス頃の出来事だと思う。
・・・と、思ったがその時はホームズは滝壺の中にいると思われていた。
1889年かな?

緑柱石の宝冠

新潮文庫/シャーロック・ホームズの叡智/延原謙訳
 1890年2月?。年がはっきりしない。
 ワトソンがベーカー街の部屋からぼんやりと外を見ていると、ほとんど発狂しているとしか思えない動きをしている紳士が歩いていた。
彼はそのまま部屋にやってきて、自分のおかれた境遇を話す。
彼は銀行の支店長で、イギリスで最も権威ある貴族(国王?)から宝冠を担保に5万ポンドを用立てたのだが、その大切な宝冠が一部壊され、はまっていた39個の緑柱石の内3つが盗まれてしまったのだ。
しかも彼は自分の息子が宝冠をいじっている現場を見てしまったのだった・・・。

 依頼主がほんとに可哀想。
ホームズが雪の降り積もった現場で、見事な足跡分析の冴えを見せる。

椈屋敷

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 ある女性が破格の待遇でハンプシャーの田舎で家庭教師の職につくことになるが、依頼主の一家は常軌を逸しているところがあり、着る服を指定されたり入れない部屋があったり、なにか大きな秘密がありそうだった・・・。

 ホームズの活躍はほとんど無く、依頼主であるハンター嬢が一人で解決している愉快な話。
事件の内容は愉快とは言い難いが。
「青いガーネット」事件に触れているセリフがあることから、その後の事件なのは間違いなさそう。
1890年の早春か?

赤髪組合

新潮文庫/シャーロック・ホームズの冒険/延原謙訳
 1890年10月9日にホームズとワトソンのところに依頼主がやってくる。
 燃えるような赤毛の人材限定で、簡単な割に高額の給料を保証する求人があった。
依頼人が勇んで申し込んだところ採用され、しばらくその仕事を続けて給料も貰っていたのだが、それが突然中止されたことが不満なので調査してほしいとのこと。
実は依頼人が営んでいる質屋を留守にさせ、その間に店内で穴を掘り・・・

 ミステリーとしてよく出来ている。ホームズしか知らない情報も駆使されるが、事件のあらましを示唆するヒントは充分に提示されている。
 気になるのは冒頭の日付。1890年10月9日は依頼人が働きに行っていた事務所が閉鎖された日なのだが(その日の内にホームズのところに相談しにきたのだ)、ワトソンはこの事務所が求人を行った日(1890年4月27日)をちょうど2ヶ月前と言っており、冒頭ではワトソンがこの手記を書く時点で、この事件は「去年の秋のある日のこと」となっている。
なにがなにやら・・・(汗)


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