獄門島
横溝正史著

 1946年9月下旬。金田一耕助は一緒に戦地から帰ってきた鬼頭千万太が引揚船で亡くなってしまい、3人の妹を守ってほしいという彼の遺言を守り、千万太の故郷である獄門島に向かった。
獄門島に向かう船の中で、獄門島にある千光寺の住職と、漁師の竹蔵と知り合い、そのまま千光寺に転がり込む金田一。
獄門島は封建的な因習が残る島で、本鬼頭と分鬼頭という網元が力を持っていたが、千万太は本鬼頭の跡取りだった・・・。

 例によって前振り情報が多すぎてここでは説明しきれない(笑)
本編に大きく関わる登場人物も勿論まだまだたくさんいる。
とりあえず言えるのは、横溝正史の代表作の一つで、本格ミステリであるということである。
本作では金田一耕助の視点で話が進むので、読者と金田一の持っている情報も等しく、そういう意味では謎を解いてみろという著者からの挑戦でもある。
勿論化夢宇留仁は解けなかったが(笑)
犯人は一応まあまあ序盤で見当がついたのだが、その動機や方法に関しては全く降参状態。あの聞き間違いは面白かったなあ(笑)
 大量の登場人物が出てくるのにそれぞれを印象づけるのが巧みで、そんな状況を混乱させずに読ませる技術はクリスティに負けてない。
また戦後の混乱が収まらない時期でかつ古い因習を保った島での物語というのはなにもかもが興味深く、なにも起こってなくても面白い。
 それはどうかと思ったところも挙げておくと、釣り鐘のトリックはちょっとやりすぎではないかと感じた。
それとやはり動機的にはちょっと弱いようにも思う。
それと三姉妹のキャラクター設定は動機とも関わるので仕方がないところもあるが、ちょっとあんまりな気もした。
あと清水さんのドタバタは必要だったのか(笑)
 しかし総じて最初から最後まで面白く読めたのは確か。
ああそれと磯川警部との再会があんなに感動的なシーンになるとは意外で面白かった(笑)
 ところで「きちがい」という単語が出てくる数では本書はおそらく日本でもトップクラスの作品だと思う(笑)
もしかしたら1番かも(笑)

20211126(mixi日記より)
20211211


マーダーボット・ダイアリー
マーサ・ウェルズ著/中原尚哉訳

 人類が様々な恒星系に植民している世界で、警備ユニットと呼ばれる高度なアンドロイドの中の、変わり者の1体の物語。
4篇からなる中編で1つの長編とも読める構成になっている。

システムの危殆
 警備ユニット「弊機」(弊社の機械の略/笑)は、自分を制御する統制モジュールをハッキングして自由に行動できるようになっていたが、連続ドラマを観る以外に特にやりたいことがあるわけでもなく(笑)、まだコントロールされたままのふりをしていた。
未知の惑星の砂漠での調査行の警備に派遣された弊機は、危うく顧客が現住生物に食われかけたところを救い出したが、弊機も大きなダメージを負った。
そんな危険な生物がいることがわかっていれば警告があって当然だったが、そのデータは削除されていた。またそれをきっかけに様々な妨害工作が行われていることがわかり、やがて調査隊はある陰謀の標的になっていることが判明し・・・。

人工的なあり方
<以下ネタバレ>
 逃げ出した弊機はボット(知能の低い専門AI)の操縦する宇宙船に乗り込んだが、その船は銀河系外天文学の研究のために作られた研究船で、ボットの性能も警備ユニットなど問題にしない超高度な処理能力を持っていた。
弊機が名付けたそのボット「ART」は、迷惑がる弊機にちょっかいを出し続け・・・。

暴走プロトコル
 メンサーの調査隊を皆殺しにしようとしていたグレイクリス社が、ある惑星でテラフォーム計画を途中で放棄していた。
惑星の環境は破壊されたままで、さらにグレイクリス社は惑星上で違法に異星文明の遺物を発掘していた疑いがある。
メンサーがその調査に参加したいと言っているニュースを観た弊機は、メンサーの助けになるかとその惑星に向かい、調査隊に潜入するが・・・。

出口戦略の無謀
 様々な悪行の証拠が暴走警備ユニットの手に握られたと悟ったグレイクリス社は、警備ユニットが接触するであろうメンサーを確保し、警戒を強めた。
厳重な警戒の中、メンサーを助け出そうとする弊機だったが、グレイクリス社はステーションの警備全体を買収した上、戦闘警備ユニットまで動員していた・・・。

 ちうわけで連続ドラマ好きで対人恐怖症のアンドロイドが主人公の冒険譚である。
SFらしいセンス・オブ・ワンダー感は皆無(笑)
センス・オブ・ワンダーの無いSFなど読む価値もない・・・なんてことは勿論無く(笑)、化夢宇留仁は非常に面白く読んだのだった。
上記の通りSF的な部分はあくまで物語のための仕掛けとディテールにすぎず、その物語も完全にキャラクターに依存しており、要するにキャラクター小説である。
なので読み味もラノベっぽい(笑)
しかし何事も徹底すれば面白くなるもので、この上下巻ほどページを繰るのがもどかしく感じたのは珍しい。
完全に主人公視点で、かつその主人公が上記の通りこじらせまくったやつで、しかし戦闘となると物理的にもサイバー的にも非常に強力というギャップも楽しい。
 化夢宇留仁は第1話「システムの危殆」は期待したよりも普通の内容だと思ったのだが、次の「人工的なあり方」で夢中になった。
超高度な恒星間宇宙船のAIとこじらせた暴走警備ユニットの連携プレーはまさに珍道中というのがふさわしく、面白すぎた。
こうなってしまうとメンサーとARTが出会ったらどんな会話をするかとか、勝手に想像して楽しんでしまう。
後半2編はそこまで突出した展開があるわけではないが、一度キャラクターが生きてしまうとこの手の作品は読者の方で勝手にいろいろ補足して楽しんでしまうので、いわゆる無敵状態(笑)
 あと興味深い描写があった。
”操縦ボットは兵装系の制御権を手放すまいと抵抗しながら、艦長の砲撃命令を実行しようと悪戦苦闘しています”
というもので、ここでいう操縦ボットというのは船のAIのことであり、操縦士の姿をしたロボットというわけではない。そのAIが頑張っているのを弊機が見た(?)内容を描いているわけだが、そこにはサイバースペースがあるわけでもなく、完全にコンピューターの中の処理だけの話なのである。
これを表現できるのは「小説」という手法だけだろう。
他にもこの作品内ではこのような描写がたくさん出てくる。
こういう小説でしか表現できないものというのは他にもいろいろあると思うのだが、ぱっとは思いつかず、興味深かった。
 もう一つびっくりしたのが、渡邊利道氏が解説でいきなり弊機のことを「彼女」と書いていたこと。
渡邊氏も警備ユニットに性別は無いと認識しているのだが、普通どちらともとれる場合は「彼」と書くと思う。
それまで中性ながら男性っぽいイメージで読んでいた化夢宇留仁はひっくり返ったのだが、どうしてそう書いたのか理由を知りたい。

20211129(mixi日記より)
20211212


キャプテン・フューチャー 輝く星々のかなたへ!
エドモンド・ハミルトン著/野田昌宏訳

 水星はその惑星の小ささが祟り、大気が少しずつだが宇宙へ放出されていた。
そこを大気製造機で補っていたのだが、もはや燃料が枯渇し、水星人はガニメデに移住せざるを得ない状況に陥っていた。
キャプテン・フューチャーは水星の大気を取り戻して維持するためには銀河系の中心にある「物質生成の場」の謎を解き明かすしか無いと確信し、銀河中心へ旅立った・・・。

 とうとう太陽系を飛び出したキャプテン・フューチャー。
しかしキャプテン・フューチャーにかかれば、太陽系外への旅など、時間旅行と同じく「先日作りかけていたシステム」にちょいと手をかければ成し遂げられるのだ(笑)
ちうかこの世界には「光速の壁」は存在しないらしい。著作時には相対性理論はもう発表されていた筈だが・・・。
まあそんなことはさておき(笑)、今回は目的の方がまた超光速航行など手段に過ぎないのが納得できるほどの大物「無から物質を生み出す秘宝」なのである。
それが銀河系の中心に存在しているのだ。気のせいか銀河系の中心にはブラックホールがあったような気もするが、そんなことは考えてはいけない(笑)
 なにしろ今回は今までにない大風呂敷なので、ツッコミどころもダイナミックなものがてんこ盛りである。
例えば光速の数千倍の速度で進みながら、迫ってくる小惑星を目視で回避するフューチャーとか(笑)
しかし物語も佳境に差し掛かると、ロマンあふれる展開を見せ、いい感じに盛り上がるのだから流石である。
また本作では久しぶりに「生きている脳」サイモンの孤独な活躍シーンが楽しめる。
ちょっと「火星のチェス人間」のカルデーンを思い出してしまったのは秘密である(笑)
 しかしそれにしても・・・・・・・
ここまでやっちゃってまだ続きが書けるというのが逆にすごい(笑)
 それはそうと、巻末の野田元帥の冒険記(?)で、次巻のネタバレを壮大に繰り広げるのはやめてほしかった。
この人そういうの多いよね(汗)

20211130(mixi日記より)
20211213


不思議の国の吸血鬼
赤川次郎著

不思議の国の吸血鬼
 エリカ、クロロック、千代子、みどりの4人で夜遅くに外食していたところ、そのすぐそばでトラックと乗用車の衝突事故が発生。
乗用車に乗っていた女性は、死ぬ前に奇妙な小箱と紙片をクロロックに渡した。
その小箱を朝までに紙片に書かれている場所に届けなければならないらしい。
その紙片には「アリス」と書かれていた・・・。

 化夢宇留仁はこのシリーズはいわゆるラノベだが、一応ミステリーの範疇だと思っていた。
しかしこの話はとうとうそれを完全に放棄してしまった。
他人の指紋がついたナイフによる殺人で罪をなすりつけようとするシチュエーションがあるのだが、最後に警察がやってきて「証拠は出ている」と言って真犯人を捕まえる。
しかしその証拠を見つけるシチュエーションが無いのだ(汗)
しかも被害者もなぜ殺されたのかはっきりしない。つまり動機も不明(笑)
まあいいんだけど・・・・しかし(笑)

吸血鬼と13日の日曜日

 山中で雷が落ち、病院が焼け落ちるという事件があった。しかしその時病院内では死人が蘇って医師と格闘していたという証言が。
それが5年前の話で、現在その現場近くのロッジに泊まりに来ていた大学生5人は、怪談話で盛り上がったりしていた。
その近くで同じくロッジを借りていたのはエリカ達で・・・。

 前の話でミステリを放棄したと書いたが、この話では完全に内容がB級ホラーに(笑)
なにしろ事件の発端からその解決まで、よそ見もしない(笑)完全なホラーストーリーになっているのだ。
だからと言って恐怖を楽しめるわけではないが(笑)
クトゥルフの呼び声のシナリオにはピッタリである(笑)
まあなにしろ吸血鬼が主人公なのでそれはそれでアリとは思うのだが、このシリーズの方向性が全く読めないので、読んでいて戸惑う。
ちうか著者はマジでなにも考えてないな(汗)

20211201(mixi日記より)
20211215


マーダーボット・ダイアリー
ネットワーク・エフェクト
マーサ・ウェルズ著/中原尚哉訳

 プリザベーションでしばらくやりたいことを探すことにした弊機だったが、新たなプリザベーション調査隊に警備担当者として同行することになった。
ところが現地で海賊に襲われ、それを辛くもかわして脱出したものの、宇宙空間で新たな脅威にさらされる。
しかもその脅威は・・・。

 ちうわけで相変わらず冒頭の展開のみで、本編の内容は全然伝わらないあらすじ終了(笑)
とりあえず前作が面白すぎたので、この本を読むまでにはさまった2冊を読んでいる間もこの続編が気になって仕方がなかった(汗)
そしてカバーの折返しの登場人物(人物?)紹介にARTの名前を見て小躍りしてしまう。
全くキャラクター小説の破壊力は計り知れない。
 本作は前作の面白トーンを崩さずにパワーアップするところはしっかりしている印象で、前作には無かったSF的なセンス・オブ・ワンダーっぽさも(ちょっとだけ)表現されている。
しかしやっぱり面白いのは弊機と、そしてARTなどのAIの思考の様子で、この微妙に人間と異なる視点はひたすら興味深い。
また意識がAIであることを活かしたぶっとんだ展開にびっくりさせられるのだが、更にこれまで弊機の一人称で通してきた本シリーズだが、本作で初めて別な視点の一人称が出てきて、これがまたまさかこの人の!?という意外な人の一人称で、本作の一番の見どころになっている。
とりあえず続編で最初の巻のよかったところやイメージが崩れてしまって絶望するということは全く無く、正統派かつパワーアップも成し遂げている安心の続編であるということは言っておく。
いやそれにしてもこの人の一人称とは・・・(笑)

20211203(mixi日記より)
20211216


獄門島
市川崑監督

 獄門島に渡る連絡船の乗り場を探す金田一耕助は、脚が不自由らしい復員兵に道を尋ねるが、その時復員兵が野菜などの食べ物をたくさん持っているのと、脚の怪我は演技だとわかる。
乗り場では今にも船に釣り鐘が積み込まれるところで、近くには獄門島の住職、村長、医師がいた・・・。

 毎度のパターンで原作を読んだので、映画を観てみた。
だいたい原作に忠実に作られているが、一部設定があえて変更され、犯人も変わっている。
これは原作の方の動機に少々無理を感じたので、むしろ映画のほうが自然に感じた。
しかし隔離された島での事件の犯人としてはやはり原作の方がしっくり来る気がする。
 注目はやはり石坂金田一だが、化夢宇留仁的にはやはり原作と比べると色男すぎる気がするが、それ以外は大して文句は無い。
そして女優陣の充実ぶりは素晴らしく、大原麗子は超可愛美しいし、坂口良子がこれまた可愛い。
意外だったのは浅野ゆう子で、3人娘の1人なのだが、何度見ても本人とわからなかった(汗)
 全体的に雰囲気的には原作をうまく再現できていると思う。
しかし2時間20分もあるのにやはり少し駆け足になっており、元々ややこしい本鬼頭、その分家、さらに分鬼頭の設定を映画だけで理解できた人がいるとは思えない・・・(汗)
 まあしかし大きな文句があるわけではなく、まあまあ面白かった。
3姉妹も意外に粒よりでみんな可愛くていい感じに狂ってたし(笑)
花子ちゃんがブラブラしている画もよかった(笑)
ただ映画の順番上「本陣殺人事件」のあとの事件になっていないので、磯川警部との感動の再会がなくなっていたのは残念だった。

20211204(mixi日記より)
20211218


恐竜ラウレンティスの幻視
梶尾真治著

を読んだ。短編集。

地球屋十七代目天翔けノア
 ある惑星に突然現れた直径30mの球体。それは地球屋で、植民地で地球のことを忘れ去った人々に地球のことを紹介しようというものだった・・・。

 悪くない雰囲気に悪くないオチ。最後のオチはいるのかいらないのか。
悪くはない(笑)

恐竜ラウレンティスの幻視
 数頭のディノニクスが未知の知性から「知性珠」をさずかる。
彼らはその後どうなってゆくのか、時空を超えた幻視を観るが・・・。

 あのままだと5500万年持ちませんが、「それ」の説明は能力のそれであって、予言ではなかったということ?
ちうかあれだと5500万年先の絶滅が早められているので、選択の余地がないような・・・。

発電の日
 あらゆることが自動化された未来。しかしそれには膨大な電力を必要とし、月に2度の「発電の日」に人間自らが発電することでそれを補っていたのだが・・・。

 自動化未来の描写のほとんどが実現されているのにちょっとびっくり。「ファクシミリ新聞」には苦笑させられたが。
オチは・・・これオチてる?

あぶきっちん
 会社から帰り、ルンルン気分で特別料理を作り始める女性。しかし彼女の好みは他と少し違っていた・・・。

 化夢宇留仁は基本的にグロ描写は平気なのだが、そういうのを食べるという描写にはトコトン弱い。
本作は筒井の「俗物図鑑」に出てきた某評論家に並ぶ気色悪さで、化夢宇留仁に実際に吐き気を覚えさせた2つ目の作品ということになる(汗)
ほんとに読むのがつらかった(汗)

無実の報酬
 女に興味の無かった会社員が、突然病院に連行される。
「配偶者出産男女同時体験均等法」の初の強制執行の対象に選ばれたのだ。
しかし彼には配偶者などおらず・・・。

 ショートショートとしては悪くない。

紙風船
 自殺未遂で病院に担ぎ込まれた男が夢を見る。その夢には古風な姿の見たことのない少女が登場し・・・。

 悪くない。これといって突き抜けたたところも無いが。

芦屋家の崩壊
 芦屋家の古い家に残っているのは芦屋二郎1人だけだった。
年金ぐらしの二郎は毎日なにをするでもなく過ごしていたが、ある嵐の夜、芦屋家に訪ねてきたのは不思議な小男だった・・・。

 これはなかなか雰囲気がよくて楽しめた。

時尼に関する覚え書
 少年の頃に出会った年配の女性は、彼に指輪を渡した。
その後の少年の人生で彼女は何度も姿を表し、そのたびに若返っていった。
やがて彼は彼女が・・・。

 設定による制限をうまくドラマに落とし込んでいて悪くない。

 ちうわけでまあまあ悪くない感じだった。ちょっと古びているところが多めかも?
化夢宇留仁にとっては「あぶきっちん」の衝撃が大きすぎてそれ以降の作品にあまり乗れなくなっていたというのもある。
解説では「あなたも本書を読んで、すばらしいSFとの出会いのおもいでをつくってください。」とあるが、化夢宇留仁にとっては思い出したくないおもいでを作る結果になった(汗)

20211205(mixi日記より)
20211220


横溝正史シリーズ 獄門島 全4話
斎藤光正監督

 1977年のTVシリーズで、オープニング・エンディング・アイキャッチを含めて3時間9分あり、概ね原作を忠実に再現している。
原作と異なるところは細かい時系列のずれと、与三松が座敷牢に監禁されていないことと原作と比べればまだ正常な雰囲気だったのと、花子の死体がやたらに目を開くこと(笑)など。
そして重要なのがラスト近くで明かされる継承権の問題で、これはそもそも原作がおかしかったのを修正した結果で、確かに言われてみれば一が生きていようがいまいが3姉妹の方が上というのは目から鱗だった。
しかしそうすると原作の大往生シーンも再現できず、このへんはドラマ制作スタッフも悩んだことだろう。
 古谷一行金田一はそもそもごつすぎてイメージとは違ったが、屈託のない笑顔など、人となりは表現できていたように思う。
逆立ちはいらないが(笑)
まあ時間があれば観ても損はしない完成度だと思った。

20211205(mixi日記より)
20211222


エイリアン怪猫伝
菊地秀行著

を読んだ。2〜3回目。
 セクシーなハーフのモデルを助手席に乗せたフェラーリで青山通りをとばしていた八頭大だったが、途中異様なものを目にして車を止め、フェラーリを女にやって尾行を開始した。
それはなよっとした感じの色男と、不気味な老婆という異様なカップルで、やがてその老婆は他の人間には見えていないことがわかり・・・。

 和風怪談テイストを全面に押し出した作品で、非常に面白く読めた。
このシリーズは毎回前半の敵の力や不気味さを表現するシチュエーションが面白いのだが、本作ではそれが特に顕著で、マンションの5階にいるのに3階から歩いて近づいてくる老婆の存在を感じさせたり、旅客機の機首に立つ老婆と、それの侵入を防ぐための大量の御札対決(片っ端から文字が消えて剥がれてゆくのでどんどん追加して貼る/笑)など、非常に面白い。
後半は老婆よりもタイトル通り怪猫の方の活躍(?)がメインになってこれはこれで面白いのだが、やはり怨霊老婆の方がビジュアルイメージ的には圧倒的に面白い。
陰惨すぎる過去の出来事も雰囲気があり、最後は例によってエイリアン絡みの話になるわけだが、これがなかなか強引な設定で、その強引なところが面白かった(笑)
色々投げっぱなしなところもあるような気がするが(笑)、そんなところを気にするべきシリーズではないので、とりあえず上出来と言っていいと思う。

20211206(mixi日記より)
20211224


火星の透明人間
E・R・バローズ著/厚木淳訳

 かつてヘリウムを侵略しようとし、ヘリウムの逆襲の結果サークの略奪にさらされ、ヘリウムの属国となったゾダンガ。
ここは今では暗殺ギルドの本拠地と化し、ジョン・カーターの目も届かない悪の温床となっていた。
カーターはなんとか暗殺ギルドを壊滅すべく、専門の組織を作って対応していたがそれでも足りず、とうとうカーター1人で潜入捜査を行うことを決意する。
ゾダンガに潜入したカーターは現地の殺し屋ラパスと知り合い、発明家ファル・シヴァスに雇われて暗殺ギルドと敵対することになるが・・・。

 本作ではカーターの隠密行動がメインとなり、前半は「用心棒」のような活躍が描かれる。
後半では舞台をバルスームの衛星サリアに移し、いつもの活劇に展開してゆくのだが、ちょっと今回は盛り上がりに欠けるところがあった。
毎度のバローズのアイデアマン振りも健在で、それが人工知能、透明人間、キャットマンとどれも相変わらず面白いのだが特に人工知能の使い方や存在意義が曖昧だったのと、透明人間は幻兵団と少しイメージが重なるところがあるのが残念だった。
後半の脱出シーンに関してはなぜ人工知能飛行船を呼ばないのか不思議だったし、最後の最後に次へ続くのかと思わせたかと思うとあっさり落着するのが拍子抜けでもあった。
最初から最後まで面白く読めるクオリティは保っているのだが、いつもの後半の盛り上がりと比べてしまうと少々おとなしい話だったと言わざるを得ない。
さすがに著者も疲れてきたかな(笑)?

20211209(mixi日記より)
20211226


十四分の海難
ブライアン・キャリスン著/村社伸訳

 北海を進む平凡な貨物船ライカミーディズ号が事故によって沈没する。
以上(笑)

 マジで上記のままの内容しかない。
物語は事故発生の3分前から始まり、事故発生後14分の合計17分間の出来事が分刻みで描かれる。
乗員は男ばかりのイギリス人52人と、中国人男性1人と、犬1匹とオウム1羽。
彼らは絶望的な状況の中で、それぞれができることをやり、それぞれの結末を迎える。
とりあえず船に乗るのが怖くなるのは間違いない作品である(笑)
惜しいのはなにしろ事故発生3分前から開始されるので、登場人物の説明が不十分なままで災害に突入してしまうところで、イギリス人が読むには十分なのかも知れないが、化夢宇留仁的には誰が誰やら全然分からないまま進行することになってしまったのが残念だった。
それと貨物船の構造や脱出時のボートや筏の描写に、化夢宇留仁の知識が足らずに少々置いてきぼりの感があったのも残念だった。
途中でネットとかで調べた方がよさそうと思ったのだが、なにしろ展開が急なのでそういうことをする精神的余裕が持てなかった(笑)
そういう意味では息もつかせぬサスペンス(?)作品なのだと言うこともできるだろう。
それにしても冷たい海は怖い(汗)

20211212(mixi日記より)
20211227


ローダンシリーズ11
核戦争回避せよ!
松谷健二訳

核戦争回避せよ!
クルト・マール著
 東ブロックは金星への遠征隊第1陣が壊滅したことを知らず、更なる輸送艦隊を差し向けていたが、そこにちょうどスターダスト2が緊急速度で通りかかり、船団は壊滅的な打撃を受ける。
地球に到着したローダンは東ブロックが政変によって第3勢力から離反するだけではなく、全世界に核戦争をしかける可能性さえあることを知り・・・。

 久しぶりに地球が舞台の工作員物で、非常に面白かった。
デリングハウス大活躍。
気になったのは最後に東ブロックの首脳陣が降伏した理由がわからなかったこと。
それまでの展開からすれば、あれで降伏するとは思えないのだが・・・。

トーラの逃走
クラーク・ダールトン著
 ローダンが地球全土に演説をしている間に、このままではアルコンに帰れないと判断したトーラは新造された駆逐艦に乗り込んで金星へ。
金星の基地で超光速通信を使ってアルコンに救援を乞うつもりなのだ。
それに気づいたローダンも駆逐艦で追うが・・・。

 この話も非常に面白かった。相変わらず金星基地が融通がきかないのが面白い。
しかしこの話のローダンは今までと同一人物なのかを疑うほどミスだらけだった。
そもそもトーラの逃走を許すのもミスだし、金星基地へのコール設定を忘れていたのもありえないミスだし、木の枝の強度を見誤って落下し、部下の命ともども危険に晒して自分も大怪我をし・・・他にもある(汗)
どうしたローダン。不死になって気が緩んだか。
 さらにこの話は今までになかったことがあり、それがクリフハンガーでもない単なる途中で終わるところ(汗)
これまでも続きはあるのが前提の終わり方だったが一応終わりだとわかるものだったのだが、本作はほんとに単なる途中で終わっている(汗)
これからこのシリーズはこんな感じで今までに増してべた〜〜〜〜っと続いてゆくスタイルになるのだろうか???

20211215(mixi日記より)
20211229


本陣殺人事件(1975)
高林陽一監督

 旧家一柳家での長男の賢蔵と久保克子の婚礼の日の夜、離れに休んだ若夫婦の部屋から、克子の悲鳴があがる。
駈け付けた家族が見たものは、日本刀で斬りつけられた2人の無残な死体だった。
凶器の日本刀は庭に突き刺してあり、室内には3つ指の血の跡が。
しかし夜の間に降り積もった雪の上には犯人の立ち去った時の足跡が無かった・・・。

 原作を読んだら映画を観るのがパターン化しているが、本作は映画の方を忘れていたので観てみた。
アートシアターギルドの作品なので変な凝り方をした奇作になっているのではと思ったが、基本的に原作に忠実に作られていた。
ただし舞台は現代(と言っても1975年だが)で、金田一耕助役が中尾彬という濃すぎる顔になっているが(笑)
特筆すべきは鈴子役の高沢順子が現代的かつ非常に可愛いというところで、彼女が映っているところだけは最近の作品を観ているような錯覚に陥る。
 全体的な完成度も高く、特に文句をつけるところもないが、やっぱりATGなんだしもっと突き抜けたところも観たかったかも。

20211219(mixi日記より)
20211230


ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2
マイクル・クライトン著/酒井昭伸訳

 あれから6年。なんとか助け出されていたイアン・マルカム博士はコスタリカで奇妙な生物の死体が見つかっているというニュースを聞いたが、リチャード・レヴィンという古生物学者がコスタリカに古代生物が生き残っていると言うのを取り合わなかった。
しかししつこく食い下がるリチャードに次第にイアンも影響を受け、問題の島が判明次第探索に向かうことになる。
一方インジェン社の遺産を横取りしようと画策するバイオシン社のルイス・ドジスンは、彼らの動向を探っていた・・・。

 「あの」映画の原作ということになっているが、実は同時進行でそれぞれが勝手に制作を進めたので、一部を除いて全然異なる内容になっている。
おかげでこちらは「あの」映画の100億倍面白い(笑)
こちらでは主要登場人物であるリチャード・レヴィンは映画には登場していないのはさておき、最大の違いはサラ・ハーディングのキャラクターだと思う。
「あの」映画をゴミクズにした中心キャラクターは間違いなくサラ・ハーディングだが、こっちのサラは映画とはまさに真逆なキャラクターで、言うことはまとも。人の迷惑になることはしない。人に助けられるどころか助ける側。むしろ彼女が主人公で冒険シリーズ物を展開できそうなヒーローキャラクターなのだ。
トレーラーの宙吊りシーンは(シチュエーションは違うが)こちらにもあるのだが、男2人を助け出すのは彼女の方である。しかも男2人共に「すごい力だ」と評されている(笑)
その後もひたすら頼りになる姉御っぷりで、化夢宇留仁は最初ジュリアン・ムーアの顔で読んでいたのだが、途中からサンドラ・ブロックに変わった(笑)
こっちのサラが映画にも出ていれば名作になったのに残念。
 あと今回気づいたのがクライトンの作風のクレバーさで、とにかくキャラクターの説明がすっきりしていて、偏屈な科学者、少年少女、悪役、その他誰も彼もがどんなやつでなにを考えて行動しているのかを非常にわかりやすく説明するので、なんというか非常に見晴らしがよく、それから始まる冒険に自然に集中できるようになっている。
これは見方によっては深みが足らないということにもなるのかもしれないが、あくまで冒険が主体の物語としては素晴らしい技術だと思った。
 で、結局本作は面白かったのかと言うと、とても面白く読めた。
ただし前作に比べるとはっきりとした山場が見当たらないのは少々残念なところで、それさえあれば前作に並んだのにとは思った。
でも非常に高いレベルの娯楽小説なのは間違いないと思う。

20211223(mixi日記より)
20220104


涼宮ハルヒの暴走
谷川流著

 また時間をさかのぼって前巻より前の出来事を2編と、その後の物語が1編。

エンドレスエイト
 夏休みが始まったその日から孤島への合宿に行っていた一行だったが、帰ってきた途端にハルヒは夏休みにやっておくべきことの一覧を作り、即座に実行にかかった。
それは一般的な夏休みらしいイベントだったが、参加させられているキョン達は違和感があった。
強烈なデジャヴを感じるのだ・・・。

 「消失」でビューティフル・ドリーマーっぽくもあると書いたが、今度はそのもので来た(笑)
繰り返される夏休み。
しかしこっちには次元を超越した存在がいるので、その繰り返し回数を正確にカウントしているのが面白く、かつ気が遠くなる効果が(笑)
うまい調理の仕方で面白かったが、いくらなんでもそんなに繰り返す前に突破口を開けるだろうとは思った。

射手座の日
 コンピューター研の挑戦によって、宇宙艦隊戦をテーマにしたゲームで対戦することになるSOS団。
相変わらず熱くなるハルヒだが、彼女以上に熱くなっているのはなんと長門だった・・・。

 なかなか面白そうなゲーム。
長門のキーボード操作の描写がかっこいい。

雪山症候群
 大晦日を前にして、雪山のロッジで推理大会をする予定だったが、いつの間にか発生した吹雪の中で遭難する一行。
しかしそれはただの自然現象ではなく、長門にさえその原因がわからなかった・・・。

 いかにもあとに続きそうな要素がたくさん出てくるが、それより気になったのはキャラクターの変質ぶりだった。
ハルヒがそんなことをキョンに対して言うとは意外。
あの人が彼らに対してあんなことを思っていたことも。
それもこれも次回作への伏線なんだとは思うが・・・。

 結果3作ともなかなか興味深い内容で面白かった。
なんか大きな変質をとげつつある気配がする。

20211224(mixi日記より)
20220105


銀河辺境シリーズ11
背徳の惑星
A・バートラム・チャンドラー著/野田昌宏訳

 ブロンソン・スター社と契約することでなんとかリトル・シスターを手放すことは避けられたグライムズだったが、その結果リトル・シスターはチャーターされ、スキャンダル専門の記者フェネラ・プルインの言いなりに。
彼らが向かったのはニュー・ヴィーナスバーグという歓楽専門の惑星で、そこで観光客を装って情報収集をしたところ、ここには亜人種の女性が奴隷として輸送されている可能性があり、それにはドロンゴ・ケインの会社が関わっているらしかった・・・。

 思うにグライムズの特徴は、特別強くもなく、特別頭もよくなく、特別持ち船の性能もよくなく(特別高価ではあるが/笑)、なにか特殊能力があるわけでもないという(耳は特別大きいらしいが/笑)、ヒーローらしいところが全然無いところである。
だから特別TRAVELLERとの親和性が高いわけだが、それはさておき、そんな彼が放り込まれるピンチの方はと言うと・・・こっちはまさにヒーロー級で、007でも切り抜けるのは難しいだろうという極悪なもので、それが今回はまたとてつもなく厳しい状況に陥ることになる。
そりゃあもうHOSTELもびっくりな状況で、読んでる方もちょっとバートラム先生やりすぎじゃないですかと問い掛けたくなる内容(笑)
 そしてヒロインがこれまた超ビッチ(笑)
007の場合はビッチは死ぬか007に懐柔されるかだが、本シリーズではビッチはビッチのまま(笑)
しかし彼女は今までにいなかったバリバリの仕事人という面もあり、なかなか面白いキャラクターだった。
 ちうわけで観光気分を味わったあとは地獄に放り込まれてその後行き当りばったりでなんとかするという、このシリーズらしい好編だったと思う(笑)

20211228(mixi日記より)
20220107


横溝正史シリーズ 本陣殺人事件 全3話
蔵原惟繕監督

 かつて本陣として栄えた一柳家の当主の結婚式に参列している金田一耕助。新婦が彼の恩師の姪だったのだ。
ところがその夜、深夜4時10分に奇妙な琴の音を聞いて離れに駆けつけてみると、新郎新婦ともに惨殺されており・・・。

 1977年のテレビドラマ版で、全3話でオープニング、エンディングを含めて2時間21分ある。
基本的に原作に忠実に再現されており、とてもよくできていた。
よかったところは、原作をよく再現している雰囲気は勿論、長門勇演じる日和警部のキャラクターが素晴らしく、そのユーモラスな表情とセリフを聞いているだけで観てよかったと思わされた。
 問題のトリックの再現を非常に丁寧に見せてくれるので、あたかもピタゴラスイッチ(笑)のように楽しめた。
 逆立ちがない(笑)
まだそういうキャラ立てが思いついてなかったらしい。そのまま無いままがよかったのに(笑)
 ちょっと気になったところは、まず事件発生の日時が戦後に変更されているところ。
古谷一行の老け具合が原因だろうか(笑)?
 鈴子ちゃんがもう一つ神秘的じゃなかったところ。
これはATGの鈴子ちゃんがよすぎたからかも。
 種明かしの時になって他人が触ったところをアルコール消毒するほど神経質だったという情報が出てくるところ。
これは前もって出しておかないと。
 しかし気になったのはほんとに細かい部分ばかりで、基本的には完成度が高くて面白かった。
そういえば一柳家の変な因縁とか人間関係とかも追加されていたが、これは別にいらなかったように思う。あっても邪魔じゃなかったけど。

20211231(mixi日記より)
20220109


エルリック・サーガ1 メルニボネの皇子
マイクル・ムアコック著/安田均訳

 メルニボネの皇子エルリックは、通常のメルニボネ人と違い、自分の快楽以外のことも考える変人で、白子だった。
彼は1万年にも渡って繁栄してきたメルニボネ王国が衰退しつつあり、蛮族(人間)達の勢力が強まっていることよりも、内省的な考え事ばかりしていたが、恋人サイモリルとは愛し合っていた。
しかし彼女の兄でありエルリックの従弟であるイイルクーンは、エルリックがメルニボネの王にふさわしくなく、自分こそが適任だと考えていた。
 ある日水路迷宮で捕まった蛮族の船乗りを拷問した結果、蛮族達が艦隊を編成してメルニボネに攻め込もうとしているのがわかった。
エルリックは艦隊を指揮して迷宮内で待ち伏せを行うが、追撃戦に麻薬の効果が切れて動けなくなったところをイイルクーンに見つけられ・・・。

 ちうわけでひさ〜〜〜しぶりに読んだ。
化夢宇留仁は昔本の奥付に記録をつけており、それによると1989年7月19日にユーゴー書店(大学構内にあった書店)で購入し、同月25日に読了したとあった。
おそらくこれまでにもう一度くらい読んだ気もする。
化夢宇留仁の当時の感想は面白くないこともないが特別面白いわけでもないという感じだったが、今読み直してみると少なくとも当時よりも楽しめたように思う。
メルニボネのいい感じに狂っている描写が面白いし、拷問人ドクター・ジェストとかかっこよすぎるし、メルニボネではドラゴンを使っているのだが、大事なときには寝てて起きてくれないとか(笑)、現在は建造不可能な「黄金の御座船」とか「海と陸をゆく船」は神秘的でかっこいいし、水の精霊や地の精霊などの描写も「人ではない感じ」が実に巧みで面白いし、巨大な記憶を吸い込む鏡が町の上に建っているビジュアルも面白いし、勿論ストームブリンガーとモーンブレイドの兄弟剣の対決も盛り上がる。
そして当のエルリックだが、考え深いようで意外に単純ですぐに色々思い込み、重要な決断は周りの忠告に耳を貸さずに「必ず間違える」というのが素晴らしい(笑)
普通これは読んでいてイライラするところだと思うが、逆に見せ場になっているのはエルリック・サーガくらいだろう(笑)
それにしても化夢宇留仁は正月早々辛気臭い本を読んでるな(笑)

20220101(mixi日記より)
20220114


宇宙大作戦 地球上陸命令
ジェイムズ・ブリッシュ著/伊藤哲訳

 TVシリーズのノベライズ。1992年9月5日に一度読了しているものの再読。
トリブル騒動
 クリンゴンの領域の近くで優先度A1の緊急信号を受信し、急いで宇宙ステーションK7に駆けつけるエンタープライズだったが、なんと呼び出した理由は新種の麦クアドトリティケールの警備のためだった。
怒るカークだが、宇宙艦隊司令部からも司令を受け、仕方なく警備をつける。
一方ウフーラはステーション内のバーで毛の塊のような可愛い生き物を見つけており・・・。

 例の話である(笑)
基本的にテレビに忠実な内容になっているが、テレビよりもテンポがいいのであっという間に読み終わる。
TV版

最後の決闘
 奇妙なブイがエンタープライズの進入に対して警告を発するが、それで引き下がっては任務にならないと無視して前進し、惑星メルコートに転送上陸する。
しかしメルコート人は警告を無視した罰として、カークの脳内にあった方法によっての死刑を宣告する。
ふと気づくとカーク、スポック、マッコイ、スコット、チェコフは1881年10月26日のアメリカ西部、アリゾナのトムストーンの街にいた。
そこではOK牧場の決闘が迫っており、カーク達はその決闘で敗北したクラントン一家の役割を与えられていた・・・。

 これもだいたいテレビに忠実だが、建物が全部ハリボテというような表現はない。
やはりテレビの方は予算の関係か(笑)
TV版

最終破壊兵器
 NCC-1017コンスティテューションからの救難信号を受けて惑星M370近辺にやってきたエンタープライズだが、コンスティテューションの姿がないばかりか、M370まで消滅していた。
なんとかコンスティテューションを見つけるが、艦は大破しており、生存者は艦長のマット・デッカー准将だけで、残りの乗員はM370に転送で避難していたという。
その破壊をもたらしたのは、古代文明が作り出した最終破壊兵器だった・・・。

 この話は少々テレビと展開が異なり、デッカー准将の特攻は無くなって生き残る。
しかし小説版の方が論理的でよかった。
TV版

地球上陸命令
 核戦争の引き金になるのを一歩手前で阻止できた事件を調査するために1968年の地球の軌道上に来ているエンタープライズ。
ところがそこに1000光年以上先からの転送ビームが。
転送台の上に現れたのは、20世紀の背広を着て黒猫を抱いたセブンという男だった・・・。

 元々他のTVシリーズのキャラクターの顔見せを兼ねた話で、テレビでも非常に奇妙なエピソードになっていたが、それは小説でも変わらず。
しかし猫ギャル(笑)は一瞬正体を表しただけで、実はセブンも操られているのを知らないという面白い設定になっていて面白かった。
TV版

鏡像世界
 惑星ハルカンで資源の交易に関する交渉を行うカークだが、ハルカン政府代表は首を縦に振らない。
一旦あきらめてエンタープライズに戻ろうとする一行だが、磁気嵐の影響で転送に不備が生じ、鏡像宇宙の自分自身と入れ替わってしまう。
鏡像宇宙の宇宙艦隊はこちらの世界とは正反対の性質を持っていた・・・。

 これもだいたいテレビに忠実だが、いくつかのシチュエーションがカットされたり変更されたりしている。
例えばチェコフによるカーク暗殺未遂はカットされているし、元の世界にやってきた鏡像世界の4人組の様子を見せるシーンは無い。
テレビではカークはパイク船長を殺害して船長になっているが、小説ではカール・フランツ大佐を殺害した結果となっている。
 最も大きな変化はマルナ・モローがいないことで、テレビではあの淫猥な雰囲気がよかったのだが、小説では楽しめそうにないのでまあいいか(笑)
TV版

金曜日の子供
 クリンゴンの領域近くにある惑星カペラ4号に鉱物資源の発掘権獲得のために上陸した一行は、現地の酋長と会見し色よい返事をもらえるが、夜になって襲撃があり、酋長が弟によって殺されてしまう。
酋長の子供を妊娠しているとして酋長の妻のエリンも殺されそうになったところを助け出すが、彼女はマッコイの手を振り払い・・・。

 テレビと似たような展開だが、カペラ4号星の住民たちがより凶悪になっており、エリンのビッチぶりも超パワーアップしており、テレビでは赤ん坊を置いて逃げ出したが、こっちでは赤ん坊を殺そうとしている連中に差し出してしまう。
またクリンゴンは話に影響してはいるが、テレビのように姿を表さない。
 この話はテレビの方がケレン味があって面白かった。
ちうか小説はほんとに原住民が凶悪すぎる(汗)
TV版

狂気の季節
 スポックの様子がおかしい。
いらいらしており、食事もとらず、挙句の果てにスープを投げつける。
スポックに事情を聞いても話さない。そして休暇を願い出、ヴァルカンで静養したいと言う。
任務に間に合うためにはヴァルカンに向かう暇は無かったが、少しだけ事情を聞き出すことができたカークはエンタープライズをヴァルカンに向ける。

 ヴァルカン人の発情期が初めて語られるエピソードで、ほぼテレビと同じ展開。
しかしテレビを観た時も思ったが、このあとのスポックの罪悪感の方が心配である(汗)
そうそう、これはテレビでもそうなのだが、結局ポン・ファーの原因は解消されてないんだけどいいのか(笑)?
TV版

 全体的に非常にテンポがよくて読みやすかったのが意外だった。
なにしろテレビ7話分を収めているのだから当然かも知れないが、描写や演出はあっさりめながらダイジェストっぽく感じることはなかった。
他のも読んでみよう。

20220101(mixi日記より)
20220114


バベル-17
サミュエル・R・ディレーニイ著/岡部宏之訳

 フォレスター将軍は配下の暗号部からの要請で、リドラ・ウォンに会いに来た。
彼女もかつては暗号部に属していたが、独立して高名な詩人になっていた。
将軍は彼女にバベル-17の解読を依頼する。
最近の破壊活動の最中に交信に用いられていたのがバベル-17で、リドラはそれが暗号ではなく未知の言語だと見破り、その解読を進める内に次の破壊活動の発生地点を確信し、宇宙船のクルーを集めて出発した・・・。

 まずタイトルと表紙から想像していた内容と全然違う内容だった。
ちうかこんな内容を想像できていたら化夢宇留仁も作家になっている(笑)
それというのも表紙の妙にリアルな女性のイラストから、もっと現代の延長っぽい世界での渋い展開を予想していて、かつ背景の黄色や赤のマッチョキメラは内容を象徴的に表したものだと思っていた。
しかし実は登場人物をそのまま描いたものだった(笑)
この作品の描き出す未来世界はまさに単純な想像の範囲を超えるもので、こんなやつらが普通に宇宙を駆け巡っているのだ。
 また勿論テーマでもある言語に関する考察も実に面白い。
最初は暗号と言語の根本的な違いというわかりやすいところから始まって、言語自体が持つ力の表現と、「わたし」の無い言語の持つ意味など、複雑ながら非常に面白いイメージを披露してゆく。
そんなややこしい内容がスペオペチックな展開に被せられて1つの作品を形作っているのだから、こんなの予想できるはずもない(笑)
しかもこの作品を書いたとき、著者ディレーニイは23歳だそうな。
やっぱりマジの作家は一般人とは別なところにいるんだなあ。

20220109(mixi日記より)
20220118


キャプテン・フューチャー 月世界の無法者
エドモンド・ハミルトン著/野田昌宏訳

 フューチャーメンの行方がわからなくなって数ヶ月が経ち、死んだのではないかと噂される中、科学者ウイスラーは月面を捜索していた。キャプテン・フューチャーの基地を探し出して隠されている高度な科学技術を手に入れようとしていたのだ。
ところが見つかったのは膨大なラジウムの鉱脈だった。
 そのしばらくあと、とうとう地球に帰ってきたキャプテン・フューチャーは、彼がラジウムを独り占めしたことにされ、カシュー主席の許可がない限り禁止されているはずの月での採掘作業も開始されようとしているのを知り・・・。

 前作からがっつり続いているのもそうだし、キャプテン・フューチャーが追われる身になるというのも初めての展開で、非常に盛り上がる。
また冒険の舞台も月の地下世界という、灯台下暗しなのだが(笑)、ここの探検の様子もワクワクさせられ、更に世界に見捨てられたと思われたフューチャーに、過去に助けられた人々が手を貸そうとするなど、感動シーンも。
 ちうわけでこれまでに最もドラマが盛り上がって面白い巻だった。
こうなるともとに戻るわけにもいかないだろうし、続きの巻も楽しみ♪

20220113(mixi日記より)
20220121


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