エコープラクシア
ピーター・ワッツ著/嶋田洋一訳

 宇宙船テーセウスが異星生命体と接触してから7年、研究施設で吸血鬼が所員を皆殺しにして脱走した。
 その少し後、オレゴンの砂漠で生物相の調査をしていた生物学者ダニエル・ブリュクスは、戦闘用ゾンビの接近を探知し、両球派の修道院に逃げ込む。
修道院では確保していた人工竜巻で進攻者たちを撃退するが・・・。

 ちうわけで「ブラインドサイト」の続編である。
あの尖りまくっていた前作の続きなので、やっぱりこっちも尖りまくりで、とりあえず感情移入できるキャラクターは1人もおらず、ドラマツルギー的なものも一切ないのも同様。
しかし今回は主人公が特に特殊な能力を持っているわけではなく、巻き込まれ型っぽい展開になるのでまだとっつきやすいかも。ただし主人公の視点でもわけがわからない状況が続くので、結局読者もわけがわからないのだが(笑)
砂漠でデジタル遺伝子(?)を持った生物の調査をしていたら、いきなり徒歩で秒速9mで迫ってくるゾンビの大群に包囲されるのだ。
その後知らない間に巨大宇宙船に乗り込まされているのだ(笑)
 物語としては巨大宇宙船「茨の冠」に乗ってテーセウスが消息を絶った太陽系外縁部に向かうのかと思いきや、テーセウスにエネルギーを補給していたイカロスがある太陽近辺でグズグズしていたのが意外で少し残念だった。
で、結局「ブラインドサイト」から続く謎に関してだが・・・
<ネタバレ>
 基本的に一番の謎である異星生命体の目的は不明なまま。
前巻の主人公シリの父であるジム・ムーア大佐が主要キャラクターの1人なのだが、彼が前巻の最後にシリに語りかけるシーンが別視点から描かれる展開が無かったのが納得いかない。
最後のオチだが、ダニエルの役目はいいとして、その役目が必要だという理由が存在しないのが納得いかない。
そんなまどろっこしいことをしなくても目的を達成することは簡単だということは、前巻の冒頭の出来事でわかっているのに。
 ちうわけで色々と納得がいかなかったが、こういうタイプの作品ですっきりと終わってくれるとは元々思っていないので、ある意味予想通り。
相変わらず内容の割には読みやすいし、ちょっととんがったSFを読みたいというときには悪くない選択肢のように思った。

20211030(mixi日記より)
20211122


SF英雄群像 スペース・オペラへの招待
野田昌宏著

 スペース・オペラの伝道師たる著者が、アメリカでの出版状況や歴史、そして主な作品の内容を紹介したもの。
この作品の紹介は古くはローマ帝政期のギリシャ人作家ルキアノスの「本当の話」や、あのシラノ・ド・ベルジュラック著の「月と太陽諸国の滑稽譚」にはじまり、ダイム・ノベルの「フランク・リード二世シリーズ」、「エジソン・シリーズ」(あの発明家のエジソンが主人公/笑)など、黎明期の作品を紹介。その後は「火星シリーズ」「バック・ロジャーズ」「宇宙のスカイラーク」「アーコット・モーリー・アンド・ウェード」「ジェイムスン教授」「鷹のカース」「レンズマン」「ノースウェスト・スミス」「ラジオ・マン」「ゲリー・カーライル」「ジョン・カーステアズ」「タビー」ときて、最後に大本命「キャプテン・フューチャー」を紹介して終わる。
ここまででタイトルを挙げていないが、簡単な紹介をされている作品はまだまだある。
ちょっと気になったのは各シリーズの内容紹介が一部抜粋の形で、まあまあそのまま載せているのが多かったことで、なぜだろうと思ったら初出はSFマガジンの連載で、当時は翻訳出版されるとは予想もしていなかったらしい。なるほど。
それにしてもそんな頃にここまで詳細な内容を完成させた元帥は流石としか言いようがない。
 化夢宇留仁が紹介されたシリーズの中で目を見張ったのは(著者の思惑とは違い/笑)、レンズマンシリーズだった。
内容紹介だけで感動(笑)
やはりレンズマンは化夢宇留仁の中では別格らしい。

20211031(mixi日記より)
20211123


007 ゴールドフィンガー
ガイ・ハミルトン監督

 ボンドはメキシコで麻薬王ラミレスの工場を爆破する。
マイアミでCIAエージェント、フェリックス・ライターと再会し、大富豪オーリック・ゴールドフィンガーのカードのイカサマを見破る。
ゴールドフィンガーの部下で彼に相手の手の内を教えていたジル・マスターソンとお近づきになるが、何者かに襲われたボンドは気絶し、目が覚めるとジルは全身に金粉を塗られて死んでいた。
ロンドンに戻ったボンドは、ゴールドフィンガーによる金の密輸を暴くという指令を受ける。
ゴルフ場で偶然知り合ったように装い、ゴールドフィンガーに近づくが・・・

 007シリーズで化夢宇留仁が最も好きな映画である。
前作「ロシアより愛をこめて」の後半にあった張り詰めた雰囲気は消え去り、全編のんびりモード。
原因は悪の親玉ゴールドフィンガーで、見るからに愛嬌があって小物感が漂う外見に、やっていることもカードのイカサマとかゴルフのイカサマとか、15年温めたオペレーション・グランドスラムも壮大なのかしょぼいのかよく分からない(笑)計画で、どこをとっても魅力的(笑)
そのゴールドフィンガーのボディーガードがシリーズ中2番めの強さを誇る不気味な東洋人オッドジョブ(1番はもちろんジョーズ/笑)で、これがまたすごくとぼけていつつ超冷酷という面白キャラで、映っているだけで楽しい。
ボンドも前作と比べれば大活躍しており、特にラスト近くの起死回生の○○○は、シリーズでも随一の成功を収める(笑)
また前半のスイスの画も素晴らしく、初登場のアストンマーチンがスイスの景色に映えてかっこいい。
 まあ映画として真面目に見れば山ほどツッコミどころはあるのはもちろんなのだが、そんなこと忘れてのんきに楽しむのが正解な作品だと思う。
ほんとに何回観ても楽しい(笑)

20211101(mixi日記より)
20211124


2010年宇宙の旅
アーサー・C・クラーク著/伊藤典夫訳

 宇宙飛行学会議議長の座を降りたヘイウッド・フロイドは、ソ連の宇宙船がディスカバリー2号よりも早く、遺棄されたディスカバリー号と木星近くに存在する巨大なモノリスと接触するという情報を受け取る。
もう自分には関係のない話だと思っていたのだが、結局彼はソ連の宇宙船アレクセイ・レオーノフ号に同乗することに。
ところが更に中国の宇宙船が恐ろしいスピードでレオーノフ号を追い抜いてゆき・・・。

 色々とややこしいのだが、本書は映画版「2001年宇宙の旅」の続編である。
したがってディスカバリー号が遭難したのは木星ということになる。
前作「2001年宇宙の旅」は実質はスタンリー・キューブリックとの共著といえるものだったが、本作は完全にクラークの単独作品である。
そもそも執筆の条件の中にキューブリックを絡ませないというのがあったという(笑)
 物語としては完全に前作とつながっているが、全編クールな雰囲気だった前作と比べ、本作は熱い展開が繰り広げられ、クラークらしい感動的なシーンも多い。
例えば中国船の重力ブレーキ成功への拍手であったり、中国船の推進剤量を無視しているとしか思えなかった速度の謎、そしてソ連船内でロシア人たちと少数のアメリカ人達が一緒に「エイリアン」を観ていたり(笑)
 化夢宇留仁は前に映画版を観ていたのだが、ストーリーの大枠は原作のままだったようだ。
後半のこれぞハードSFと言える展開も大いに盛り上がるし、復活したハルの態度とその結末も、そしてまさかの木星むにゃむにゃ(笑)といい、全編とてもおもしろく読めた。
要するに流石クラーク先生としか(笑)

20211103(mixi日記より)
20211125


2010年
ピーター・ハイアムズ監督

 を観た。再見。
最初に観た時の感想
 ヘイウッド・フロイド博士はソ連の科学者からソ連船がディスカバリー号に先に着くことと、ディスカバリー号の軌道がずれてこのままだとイオに落下することを知らされ、ソ連船レオノフ号に同乗することを決意する。
レオノフ号は道中木星の衛星エウロパに生命体が存在するはずの証拠を発見し、無人探査艇を送るが、生命体を目視できそうになった瞬間に何かが起こり、探査艇は破壊される。木星の重力と大気で減速したレオノフ号は衛生イオの軌道上で回転するディスカバリー号と邂逅し・・・。

 原作を読んだので映画も見直してみた。
大枠では原作のストーリーを忠実に再現していて楽しめた。
しかしいくつか注意する点がある。
 まず前作「2001年宇宙の旅」と比べたら普通のアメリカ映画であり、あの感動をもう一度と思ったら落胆するのは間違いない(笑)
 原作で大いに盛り上がった中国船の存在は丸ごとカットされており、非常に残念だった。
 レオノフ号の船内がディスカバリー号ほどに洗練されていたらそれはそれでおかしいのだが、赤青黄緑の原色の光の連続はやめてほしかった(汗)
 原作ですごく楽しめたのがソ連クルーとアメリカ人クルーの和気あいあいとした雰囲気だったのだが、それは大きく削がれ、それどころか地球で米ソが戦争状態に突入してしまい、コミュニケーションさえまともに取れない状況に(汗)
これは短い時間内でドラマを盛り上げ、オチに持ってゆくための手段としては納得できるのだが、なにしろ原作がいい雰囲気だったので非常に残念。
 チャンドラ博士がハルに嘘をつく。
これは原作からすると考えられないのだが、それもラストの流れではハルのセリフに泣かされるいい感じの作りで、まあよし(笑)
 それとフロイド博士の離婚がカットされた。
これはどうでもいい(笑)
 思うに映像作品としての2001年はやはり特別なんだとこの映画を観るとよく分かる。
どこもかしこも凡庸で、悪くはないしむしろすごく頑張って作っているのだが、あれと比べてしまうとどこもかしこも相手にならない。
しかし原作を丁寧に映像化している良映画なのも確かなので、前作と比べずに楽しみたい。

20211103(mixi日記より)
20211126


涼宮ハルヒの消失
谷川流著

 12月17日。涼宮ハルヒがSOS団によるクリスマスパーティーの開催を宣言。早速準備に取り掛かることに。
翌日キョンが登校してみると、世界は変化していた。
昨日まで誰も欠席していなかったのに多くの生徒が風邪で休んでおり、なぜかあの朝倉涼子が普通に登校しており、極めつけは涼宮ハルヒのことは誰も覚えていないということだった・・・。

 これは面白い。
うまく喪失感が表現されていて、クライマックスもよく考えられている。
化夢宇留仁が全く読んだことのない頃に想像していたのはこんな内容だった。
ネタバレになるのでなぜかは書けないが、3巻「涼宮ハルヒの退屈」は読んでいる必要がある。
ちょっとビューティフル・ドリーマーっぽい雰囲気も。
そして綾波化が進む長門(笑)

20211104(mixi日記より)
20211127


007は二度死ぬ
ルイス・ギルバート監督

 アメリカの有人人工衛星が衛星軌道上で何者かに捉えられ、行方不明に。
アメリカはソ連の仕業だと告発するが、イギリスは宇宙船は日本近辺に着陸しているという情報を告げ、調査を開始する。
一方ジェームズ・ボンドは香港で射殺されていた(笑)。
しかしそれは敵の目を欺くための偽装で、水葬されたボンドは潜水夫に救出され、イギリスの潜水艦内で日本へ調査に向かう司令を受ける。
日本に上陸したボンドは、蔵前国技館で横綱佐田の山の仲介により諜報員アキと接触し・・・。

 007シリーズが存在感を増してきていた時期の作品で、大々的な日本ロケ、信じられないくらいの大規模なセットなど、制作費もとんでもないことになっている。
しかしまだ日本が「神秘の国」だった頃の作品なので、日本人が観るとのけぞるような奇天烈シーンの目白押しとなっており、そこがまた見どころでもある。
その中でも姫路城が忍者部隊の訓練場になっているという設定は味わい深い。
 また悪の組織の財力と科学技術がすごすぎるというのもこの映画のポイントで、米ソを開戦させて疲弊したところを支配者として名乗りを上げるという計画なのだが、それだけの力があれば普通に経済侵略で目的を達成できそうである(笑)
特に軌道上で宇宙船を捕獲する宇宙船の存在は、そんなことができるのなら正面切って戦争しても勝てるのではと思わされる(笑)
 もう一つの見どころはもちろん日本そのもので、トヨタ2000GTはしびれるほどかっこいいし、丹波哲郎も頼りになるし、ダブルボンドガールの(実は敵役でもう1人いるのだが)若林映子、浜美枝が超可愛い。
 しかしなにしろ計画も基地も大規模過ぎて最後はまさに局地戦の様相で、それまでの展開もボンドは丹波の言うなりなので、ジェームズ・ボンドの活躍という点では全然観るところがないのは困りもの。
そしてあの日本人への変装もひどすぎる(笑)

20211107(mixi日記より)
20211128


ターザンの復讐
エドガー・ライズ・バロウズ著/高橋豊訳

 フランスに向かう客船上で、カードのイカサマの濡れ衣を着せる汚い工作を目に止めたターザンは、それを止め、ド・クード伯爵の窮地を救う。
ところが逆恨みした2人組に恨まれ、また船上で出会った美しい女性も彼らに脅迫されているのを観るにつけ、ターザンの怒りが爆発。
しかしその2人組はターザンの予想を遥かに上回る執念深さでターザンを付け狙うのだった・・・。

 化夢宇留仁が書くあらすじは、本の冒頭の状況を書くようにしている。
したがってそれが本編の内容を伝えるにはあまりにも情報不足な場合が多い。
今回もそうで、その後ターザンはフランスの安宿で大暴れをしたあと、北アフリカに渡って砂漠で大活躍。そして最後は生まれ故郷のアフリカのジャングルでまた大暴れ(笑)するのだが、そういう大きな流れは実際に読んで楽しんでほしいと思うので書かないようにしているのだ。
今回は書いたけど(笑)
 ちうわけでターザン第2作は世界を股にかけての大活躍が描かれ、また何人ものヒロインも出てきて彼にうっとり(笑)するのだが、もちろんその中にはあのジェーンもいる。
ちうかここまで一切書いてなかったが、そのジェーンとの顛末が今作のメインなのだ(笑)
そして・・・語るも涙思い出すも涙(笑)のクレイトン卿・・・彼はほんとに可哀想すぎて彼が主役の悲劇としても楽しめる(笑)懐の深い作品である。
 ところで前作から気になっていたのだが、ターザンは象と友達である。
1作目ではそれが噂話程度の感じで語られ、しかし実際に友好関係を結んでいるシーンは無かった。
今回はそれが出てくるのかと思いきや・・・やっぱり出てこなかった(汗)
あの「象と友達」という設定は必要なのか(笑)?
 あ、そうそう。ターザンは本作でアラビア語とアフリカ原住民語もしゃべれるようになったよ(笑)

20211108(mixi日記より)
20211129


パーキー・パットの日々
フィリップ・K・ディック著

 ディックの初期作品を集めた短編集。

ウーブ身重く横たわる
大森望訳。
 ある惑星で船員の1人が50セントで買ってきたのは、巨大な豚のような生物だった。
それが食用にできるか調べてみようとしたところ、その生物は高度な知能とテレパシー能力があることがわかり・・・。

 ディックのデビュー作らしい。
しかしオチがなにを言いたいのかわからなかった(汗)
化夢宇留仁が読解力がないのか、それとも現在ではオチと認識できないほど使い古されたシチュエーションだからか・・・?

ルーグ
大森望訳。
 犬はルーグ達を警戒していた。
しかし人間はルーグたちの驚異に気づかず、やがてルーグ達は・・・。

 これもなんだかよくわからなかった(汗)

変種第二号
友枝康子訳。
 米ソの戦争は、核ミサイルによってアメリカが焼け野原になっても終わらなかった。
アメリカはクローと呼ばれる自律型ロボットを開発し、反撃に出た。
クロー達は改良され続け、やがては自分たちで自分たちの修理もできるようになっていた。
 ある日ソ連の使者から話し合いたいというメッセージを受け取った米軍はヘンドリックス少佐を派遣した。
彼は道中テディベアを抱いた難民の少年と出会い・・・。

 非常にディックらしい絶望的で不気味なビジュアルをもつ作品で、この話を読んでから寝たら、見事に影響された悪夢を観た(汗)
しかしページを繰る指が止まらなくなる迫力がある。

報酬
浅倉久志訳。
 ジェニングズが気づくと、彼はここ2年近くの記憶が一切無かった。
しかしそれには驚かなかった。そういう契約だったのだ。
しかし約束の報酬が、彼の記憶にない期間の彼自身によって7つのガラクタに変更されていたのには驚いた。
絶望と疑問に苛まれながらその会社を出たジェニングズだったが、即座にSPに捕まってしまい、彼がこの2年間どこでどんな仕事をしていたのか聞かれ、答えようにも記憶がないので答えに窮した結果・・・。

 化夢宇留仁にとってはまさに「THE ディック」と思える作品。
オチは逆の意味で意外だったが、ビジュアル的に面白かった。

にせもの
大森望訳。
 恒星間戦争中の地球で、いきなり逮捕されたオルハム。
彼は宇宙人によって作られた精巧なロボットであり、かつ強力な爆弾であると断定されたのだ。
しかしそんな記憶は一切ないオルハムは、なんとか自分が人間だと証明しようとするが・・・。

 これも実にディックらしい作品。
なんだか話の展開に覚えがあると思ったら、前に観た映画の原作だった。
オチは映画の方ではもう少し凝ったものになっていたが、よく覚えていない(汗)

植民地
大瀧啓裕訳。
 その植民地候補の惑星には美しい自然が広がっており、驚くべきことに一切の有害な細菌やバクテリアが存在していなかった。
しかし植民地としての許可を地球に通達しようとした直前、ある事件がおこり・・・。

 へんてこなビジュアルが面白い作品。
ディックっぽくは無いけど。

消耗員
浅倉久志訳。
 昆虫の言葉がわかるようになった男の物語。

 最後の物分りの良さが意外(笑)

パーキー・パットの日々
浅倉久志訳。
 核戦争によってほぼ壊滅した地球では、生き残った人々は大小様々な地下シェルターで暮らし、生活に必要なものはなぜか火星人達が空から支給してくれていた。
地下シェルターで大人達が夢中になっているのは、パーキー・パットというティーンエイジャーの女の子の人形と、精巧な模型を使った人生ゲームのようなゲームで、彼らはそれで戦争前の幸せな生活を思い出していた。
しかしシェルターで生まれた彼らの子供世代はそんなゲームには興味がなく、外の世界で狩りを楽しんでいた。
ある日数マイル離れたシェルターではパーキー・パットではなくコニー・コンパニオンという人形を使っているという話を聞き、シェルター間でのゲーム対決が企画され・・・。

 その状況(核戦争後の荒廃した世界)のみならず、その世界での文化を細かいディテールで表現するところにディックの目の付け所の鋭さを感じる。
更にそれらのディテール自体が物語を展開させ、現実世界の成長につながるオチに持っていくところはもはや神業。

たそがれの朝食
浅倉久志訳。
 いつもの朝のはずだったのに、マクレーン一家は家ごと数年後の世界にタイムスリップしてしまう。
そこは核戦争によってなにもかもが破壊されるも、アメリカは残った力を全力で戦争につぎ込んでいる世界だった・・・。

 冷戦時代の不安と現実逃避をしている現実を見事に表現した佳作。
当時読んでいたら背筋が凍っただろう。

フォスター、おまえ、死んでるところだぞ
友枝康子訳。
 アメリカは空前の対戦争景気に沸いていた。
各家庭はシェルターを備え付けるのが常識であり、それも次々と新商品が出る。
学校ではサバイバルの授業が行われ、なにもかもが戦争に注目していた。
しかしマイクの父は非軍備主義者で、家にはシェルターもなく、彼は肩身の狭い思いをしていた。ところが・・・。

 「たそがれの朝食」の真逆と言える内容。
誰も彼もが戦争のことしか考えていないが、それを自分の世界の縮尺まで落とし込んでいる。
これも一種の現実逃避の手段である。

 ディックの作品は、内容がどれも凝っているが文章はとても読みやすい。
またSFガジェットは物語の展開のために出てくるだけで、そこにSF(サイエンス・フィクション)的な説明などは一切無い。
まさにこれはディックがストーリーテラーであり、その物語アイデアや表現している世界をわかりやすく伝えようとしていることを示していると思う。
やっぱり他の作家とは一味違う。

20211110(mixi日記より)
20211130


ミステリと言う勿れ 1〜7巻
田村由美著

 を読んだ。というか、今日7巻を読了した。
職場のHRさんに借りて読んでいたのだが、HRさんが8巻以降はデジタルで買っているということで貸してもらえず、ここで一旦打ち切りということに(汗)
あ〜〜〜〜デジタル本は貸し借りができないのが致命的だよね。本は貸し借りするからこそ読者が増えると思う。デジタルでも同じプラットフォームがあれば貸し借りシステムは作れるんだから、実装すべきだと思うなあ。
赤外線でしか貸せないようにして(手渡せる距離)、貸してる間は貸主は読めなくなるの。又貸しはできた方が面白そう。
あと古本屋に売れるシステムも、というのは冗談だが(笑)

 さて本作品だが、久能整(くのうととのう)という学生が主人公で、彼は彼女も友達もいないが抜群の観察力と情報の整理力(?)を持っており、かつ実は話すのが好きというキャラクターで、持ち前の能力を駆使して難解な事件を解決してゆくというもの。
これが実によくできていて、特に1、2、6,7巻あたりは非常に盛り上がる。
近々ドラマも始まるらしいが、セリフが多いのでちょっと舞台劇っぽくもあるし、おそらく映像にもしやすいと思う。
また主人公以外の登場人物も魅力的なものが揃っており、ある意味レクター博士みたいな立場の○○とかも非常にいい感じ。
 というわけでとても楽しく読んでいたのだが、続きをどうしたらいいのか現在悩み中。
マンガは容積と楽しむ時間のコストパフォーマンスが悪いんだよな・・・。

20211110(mixi日記より)
20211201


エイリアン黙示録
菊地秀行著

を読んだ。2〜3回目(汗)。
 ニューヨークの古書店で見つかったその稀覯本を手に入れるために、八頭大は日本から5時間で現場に駆けつけ、100万ドルを支払った。
しかし思った通り本を狙う刺客の手も伸びていた。
巨体のサイボーグ、生き物のように鞭を操る男の2人の殺し屋から辛くも逃げ延びた大は、チャイナタウンのバーで祝杯をあげようとするが・・・。

 なぜか無性にこのシリーズを読みたくなったので読んだ。
面白い(笑)。
クトゥルフ神話と関連深い本シリーズだが、本作ではタイトルの通り聖書関連のエピソードなので、クトゥルフ関係はいくつか書名が出てくる程度に留まっている。
その代わり聖書関連の情報とその斬新すぎる解釈には力が入っており、興味深く読めた。
また普通の冒険小説としても、上記の2人の殺し屋に加えてまだまだ滅茶苦茶な能力を持ったやつが出てくるので飽きさせない。
 1つ気になったのは駐車場のシーンの展開で、主人公も疑問を呈していたが、やはり「暴走」だけで片付けるには少々やりすぎだったと思う。
ミステリとして提示された混沌とした状況は、やっぱりすっきりと解決してほしいと思う。

20211111(mixi日記より)
20211202


ローダンシリーズ10
宇宙の不死者
松谷健二訳

宇宙の不死者
K・H・シェール著。
 スターダスト2がヴェガ星系に到着すると、大きな異変が起こっていた。
恒星ヴェガが急激に膨張し、超新星爆発を起こしそうになっていたのだ。
このあり得ない事実を解決するには不死の謎の正体を突き止めるしか無いと判断したローダンは、目的のさまよう惑星の座標に向かう・・・。

 不死となったローダン。
普通なら10巻目にしてとうとう成就とは気の長い話だと思うところだが、なにしろ現在日本語版だけでもまだ640巻以上もあるのだから(汗)序盤も序盤であり、そう思うともうなったの?とも(笑)
それにしてもアルコンの2人はカワイソス。

金星の危機
クルト・マール著。
 スターダスト2は太陽系に帰ってきた。
ところがなぜか地球の時間は彼らが知る時よりも4年も進んでいた。
しかもローダンが帰らないと思った東ブロックは独自に行動を起こし、金星に基地まで築いていた・・・。

 いきなり挟まるミリタリーエピソード(笑)
まあそもそも相手になるわけがないのだが、その上金星の環境だけでもボロボロになってゆく東ブロック軍には同情を禁じえない(笑)
残念だったのはアザラシ君たち(笑)の再登場がなかったことだが、更にはラストの展開には、彼らに危険が及ぶのではないかと心配になった(笑)

 サイクルの切れ目ではないはずだが、とりあえず大きなイベントが1つキリがついた。
謎解きは基本的に受け身な雰囲気だったので、これから能動的な話が増えてくれたら嬉しい。
それとそろそろ2人をアルコンに連れて行ってあげてほしい(笑)

20211113(mixi日記より)
20211203


機動戦士ガンダム
閃光のハサウェイ
村瀬修功監督

 宇宙世紀0105年。
地球に降りるシャトルには、政府高官の他、一部の軍人などが搭乗していた。
シャトルが大気圏に突入した後、いきなりハイジャックが船内に侵入する。
彼らは反政府組織マフティーを名乗り、軍資金を調達すれば乗客は開放するというが、同乗していたハサウェイ・ノアは、ギギという女性に「偽物なんかやっちゃえ」と言われ、実行する。
ハサウェイ・ノアがマフティー本人だったのだ・・・。

 アマゾンプライムで追加料金無しで観られると聞いたので観てみた。
感想は・・・まあまあ。
NTと比べれば拡張されすぎたニュータイプ能力とかが出てこないので安心して観られる。
脚本、演出、画面もどれも高いレベルでできている。
ただし盛り上がるシーンは一切ない(笑)
そもそも化夢宇留仁にとってはハサウェイはチェーンを自分の身勝手な理由だけで殺している時点で死刑にすべき存在なので(笑)、おおっぴらに応援することもできないというのもあるのだが、そういう演出にもなっていないのは確かだと思う。
ちなみに化夢宇留仁が一番気になったのは、冒頭のシャトルのハイジャック犯が乗ってきたギャプランだった(笑)

20211113(mixi日記より)
20211204


SFロマン キャプテンフューチャー1
恐怖の宇宙帝王

辻真先構成

 TVアニメ「キャプテンフューチャー」のノベライズで、原作の同タイトルの作品を元にしている。
読んでみると原作を上回るほどにテンポがよく、中には原作には無かったかっこいい描写とかもあって楽しめた。
例えばキャプテンが悪党と戦っているときのそばにいるグラッグの様子は「船にもたれたグラッグは、ろくすっぽ戦いを見もせずに、先ほど投げだしたプロトンガンを拾って、土ぼこりをはらってやっている。」てな感じでプロの余裕がかっこいい(笑)
後半は舞台を太陽系外に移した関係で、原作にあった木星の火炎地帯を模した舞台が出てくるのだが、それがなぜ惑星上に存在するのかという部分を発展させ、古代文明の力と軌道上の奇妙な月の設定まで取り込んでいるのがお見事だった。
それ以外にもハードSFな描写が散見され(光速に近づくと視界の星が前方に集中するとか)、当時のスタッフに高いSF熱があったのが伺われる。
カラー口絵もたくさん載っており、巻末には野田元帥のコメントも。
なんでか押入れの中から出てきたのだが(笑)、読めてよかった♪

20211113(mixi日記より)
20211204


007 ダイヤモンドは永遠に
ガイ・ハミルトン監督

 ブロフェルドを探しまくり、とうとう見つけたブロフェルドをぶち殺すボンド(笑)
その後ダイヤモンド密輸に関する調査を指示されたボンドは運び屋のピーター・フランクスにすり替わり、アムステルダムで連絡役のティファニー・ケイスと会う。
ティファニーはボンドの指紋を採取して検査するが、フランクスの指紋に間違いなかった・・・。

 ジョージ・レイゼンビーの「女王陛下の007」が興行的に大失敗に終わり(すごく面白い映画なのだが・・・)再びショーン・コネリーにお鉢が回ってきた異色作。
まずこの映画は化夢宇留仁にとって盲点だったらしく、昔観たことがあるのは確かなはずだが全く見覚えがなく、テーマ曲さえ聞き覚えがないのにびっくりした。
 で、内容はといえば・・・ネットなどを観てみるとクソミソに言われている本作だが、化夢宇留仁はとてもおもしろく観れた。
確かにブロフェルドがやっていることがギャグすぎるとか、色々突っ込みどころは多いのだが、実は世間の評価とは逆にボンドのスパイとしての有能さが最も表現された映画である。
すり替わり、潜入、誘惑、情報の精査、脱出と、スパイに必要なシチュエーションをボンドが全て成功させているのはこの映画だけである。
この映画のボンドはまさにプロフェッショナルの貫禄がある(笑)。
 そうそうHPの「黄金銃を持つ男」のレビューでボンド映画で唯一女性の乳首が観られる映画と書いたが、この映画もそうだった。
それは冒頭のブロフェルドの行方を探すシーンにある(笑)
ちうわけで地味ではあるが変なギャグっぽいところも寛容に楽しめば、しっかりと作られていてよくできた作品だと思った。

20211114(mixi日記より)
20211206


SAS プリンス・マルコ
イスタンブール潜水艦消失
ジェラール・ド・ヴィリエ著/伊藤守男訳

 イスタンブールのボスポラス海峡近くのマルマラ海で、演習中だったアメリカの最新原子力潜水艦が消息を絶つ。
ソ連の潜水艦に撃沈されたとしか思えない状況だったが、ソ連の潜水艦がボスポラス海峡の厳重な監視網をくぐり抜けてマルマラ海に到達できるとは思えない。
数日後ダイバーの死体が引き上げられ、その死体の装備にはキリル文字が。
調査のために派遣されたマルコ・リンゲはまず消失した潜水艦の元乗員であるワトスン大尉と接触しようとするが、彼を観たのはホテルの窓外を悲鳴を上げながら落下していくのが最初で最後となった・・・。

 プリンス・マルコシリーズ本来の第1作である。
しかしいきなりマルコはこの仕事を始めて20年になるという。前に読んだ第49作では一体何歳だったんだ(汗)?
 さすがに第1作だけあって、文章や話の運びなど、49作目(笑)と比べるとぎこちないところも目立つが、とにかく女に目がない主人公、どいつもこいつも魅力的なキャラクター、ユーモラスながらシリアスという本シリーズならではと思える特徴は十分に備えていて、とても面白かった。
また本作で第2の主役と言えるのがトルコの殺し屋エルコ・クリサンテムで、彼の初登場時はこんな感じである。
”エルコ・クリサンテムはイスタンブールきっての良心的な殺し屋だったが、生活は食うや食わずだった。”
てな感じである(笑)
本作はマルコの活躍というよりも、殺し屋クリサンテムの散々な顛末と言った方が正しいかもしれない(笑)
またヒロインも続々と出てくるが、中でも強烈なのがダンサーのライラで、彼女が出てくるだけで活気が出て楽しくなる上に、マルコが殺し屋に手も足も出ないところを、殺し屋に襲いかかって顔をひっかき手首に噛み付いて撃退するというガチな活躍&マルコの情けなさがよく分かるシーンも(笑)
最後のドアを開けた時の様子も最高だった。
他にも愉快な元海兵隊員2人組とか、とにかくキャラクターが面白い。
 ちうわけで最初からとても面白く、そしてスパイ物にも関わらず007シリーズとは全然違う方向を目指していたのがわかったのが収穫だった。
次巻を読むのも楽しみ♪

20211116(mixi日記より)
20211207


九百人のお祖母さん
R・A・ラファティ著/浅倉久志訳

 SF界きっての奇想作家として名の知れた著者の作品を読んだことがなかったので、どれどれと短編集を手にとってみた。

九百人お祖母さん
 特殊様相調査員のセラン・スワイスグッドは、上司からもっと強面のする名前に変えろと言われていたが、本名のままで通していた。
そんな彼が興味を持ったのは、プロアヴィタスという小惑星の原住民に寿命がないと言われていることで、それが本当なら原初の祖先と話をすれば知的生命の発生の秘密を聞き出せるかも知れないと思い・・・。

 寿命のない種族の最初の先祖は発生の真実を知っているというのは目の付け所が面白い。
そしてその祖先たちの描写がビジュアル的に面白く、世界の空間体積的にも筋も通っている(笑)
しかしそこまで奇想かというと、そうでもない。
日本の古典作家も書きそう。
・・・と、思ったら本作は、表題作でもあるのにこの短編集で最もおとなしい内容なのだった(笑)

巨馬の国
 北インドの砂漠に雷鳴が鳴り響き、蜃気楼が実像を伴い出す。
一方世界では一定の条件に符合する人々の大移動が始まっていた。
彼らはみなこう言う。
「故郷に帰る」と。

 オチの「第2の実験」の顛末が面白すぎる。

日の当たるジニー
 ミンデン博士は近所付き合いをしているディスマス博士に、近々発表する予定の論文のことを話していた。
それは人類の進化における常識を覆すセンセーショナルな内容だったが、事態はすでに彼らの子供たちによって新たな局面に進行していた・・・。

 そもそも博士が覆そうとしているのが、人類の祖先はザウエン人という遺骨が100体ほど発見されている猿人であるという常識(笑)の内容であり、前提からして人を食っている。そしていきなりなだれ込む終局の始まり。
いやいやそうだったら「進化」という試み自体が今まで成功してないでしょう(笑)

時の六本指
 ある朝チャールズ・ヴィンセントが目覚めると、世界は彼を除いて時間がすぎるのが1/60ほどの速度になっていた・・・。

 ラファティ版「お助け」(笑)
奇しくも両作は同じ1960年に発表されている。
しかし切り口は「お助け」と同じでも、その後の展開はラファティの方はまさに斜め上の方に進み、予想しない場所に着地する。
筒井がおかしいのはよく知られていることだが(笑)、ラファティはその斜め上を行く。

山上の蛙
 「わたしは宇宙空間が憎い」と宣言したガラマスクは、パラヴァータという惑星に降り立ち、そこで3つのレベルの目的を達するべく行動を開始する・・・。

 上記の説明だと内容が一切伝わらない。そもそも「わたしは宇宙空間が憎い」というセリフは物語と全く関係ないのだ(笑)
しかしそれは読者である化夢宇留仁にとっても同じことで、その後の叙事詩のような展開にはクラクラさせられ、種明かしではなるほどとなったが、結局冒頭のシーンはなんのためにあったのか・・・(笑)?

一切衆生
 アンソニー・トロッツは3人の人間にインタビューを行ったが、自分に起きている異常事態を説明することはできなかった。
彼は世界中の人々を知っていたのだ。彼らが誰で、今何をしているのかも・・・。

 冒頭のインタビューシーンがものすごく面白い。
しかしその後の本編はいささか普通(?)な感じ。

カミロイ人の初等教育
 アイオワ州ダビュークから惑星カミロイにPTAの調査団が訪れた。
カミロイではあらゆることが地球の常識では図り難く、まず彼らに対応するために通りがかりが数名集められて現地のPTAが組織され、現地の教育について教えてくれることに・・・。

 なんだかよくわからないけど滅茶苦茶面白い(笑)

スロー・チューズデー・ナイト
 乞食であるバジル・ベイグルベイカーは、夜の間に株で4度も億万長者となり、4度も失敗して朝には乞食になっていた。
イエウデファンサ・インパーラは成功を収めた男性と結婚してはハネムーンに旅立ち、帰ってきて離婚し、また新たな成功者と結婚した。
100階建てのビルは取り壊され、全く新しいビルが建った。
それらは一夜のできごとで・・・。

 ものすごく目まぐるしくて読んでいても目が回ってくる(汗)
普通は不可能としてボツになるアイデアだと思うが、そこを普通に形にしてしまうのがラファティなところなのだろう。
ちうかこんな短編で群像劇というのも珍しい(笑)

スナッフルズ
 ミスター・キャロルは惑星ベロータは宇宙で唯一冗談半分で作られた世界だと言った。
そこは確かに重力からして奇妙で、なにもかもが常識と反していた。
調査に降りた一行は、そこでスナッフルズという熊のような巨体で高度な知性を持った動物と遭遇する・・・。

 ラファティ版「走る取的」(笑)?
ちうか作品に悪口言われて怒ったのか(笑)

われらかくシャルルマーニュを悩ませり
 グレゴリー・スミルノフをはじめとした「研究所」の面々と、高度なコンピューターであるエピクティステス(エピクト)は、過去の改変実験を行おうとしていた。
その内容は西暦778年のフランク軍への待ち伏せを失敗に終わらせ、その後のキリスト教と回教徒との断絶を無かったことにしようというものだった。
彼らは歴史が記された詩篇を前に、またそれ以外にも外の景色やメンバーなど、改変の結果が反映されるであろうものを予測し、注意していた。
果たして実験は成功し・・・。

 誰か実行する前にその可能性に気づけよ(笑)
藤子・F・不二雄だったかで似たような話を読んだような気もする。
ちうか第2実験の結果が面白すぎる。話し管って(笑)

蛇の名
 法王があらゆる場所であらゆる民に教えを授けるように命を出したので、バーナビィ神父は惑星アナロスにやってきた。
アナロス人はガーゴイルそっくりの不気味な見た目をしていたが、陽気で人懐っこく、高度な知性を持っていた・・・。

 「カミロイ人の初等教育」と同じような展開かと思わせておいて、ラストでぶっ飛ばされる。
これは予定調和(笑)?

せまい谷
 1893年。ポーニー族の生き残りの1人であるクラレンス・ビッグ=サドルは、与えられた土地160エーカーにうろ覚えの魔法をかけた。
谷が実り多くよいものであり、しかしよそ者が来たときには狭くなるように。
現代。160エーカーの政府管理地があるのに気づいたランパート一家が、その土地の入植権を手に入れ、意気込んで現地に行ってみると・・・。

 ビジュアルが奇妙で面白い。
しかしなにより奇妙なのは、理由もなく変すぎるランパートの奥さんと子供たちの方だったりする(笑)

カミロイ人の行政組織と慣習
 今度は行政分析調査の一団がカミロイに到着した。
カミロイの行政は、もちろん地球のそれとは全く異なっており・・・。

 個人の能力に大きく依存する、やっぱり滅茶苦茶なカミロイの行政制度だが、あの教育制度が土台であれば意外にうまくいきそう(笑)

うちの町内
 アート・スリックはジム・ブーマーとともに、通りの果てで線路の土手とぶつかっている行き止まりのブロックに行く。
そこではいつの間にか多数の人々が住み着いており、いくつもの店や工場?を運営していた。彼らのやることは物理的に無理と思えるところが目についたが有能で、なんだか似たような顔をしていた・・・。

 なんか全然語られないけどすごい侵略が行われているような・・・(笑)
この話はなんだかとても楽しい。

ブタっ腹のかあちゃん
 ジョー・スペードは脳みそがパンパンに詰まっていたので、ときどき能天気師に診てもらっていた。分析精神医つまり能天気師に「男やもめに蛆がわく」という格言を授かったジョーは、それを相棒を探せという意味だと受け取り、グログリーの酒場でモーリス・マルトゥラヴァースという男を捕まえる。
2人で完成させたのは必要なものとそうでないものを判断できる消去機械だった・・・。

 機械が完成するまでの流れを書いたが、これは基本的には物語と関係ない(笑)
ただやたらとへんてこなキャラクターの紹介には役立っているが。
こういう変なところにダラダラと項数をかけるところが面白いが、星新一なら最初の1行目で博士が機械を完成させているところである(笑)
ちなみにオチも星新一っぽい(笑)

7日間の恐怖
 9歳のクラレンス・ウイロビーは消去機を作った。
彼はそれを使って手始めに消火栓を消し、辺りを水浸しにした。その後他の物も次々と消し、街は大混乱に陥った。
その事態を正確に把握しているのは、彼の妹のクラリッサだけだった・・・。

 最後のセリフがすごすぎる(笑)
それにしてもラファティはなにかを消すのが好きだな。

町かどの穴
 ホーマー・フースが仕事を終えて家に帰ってくると、愛しい妻レジナが悲鳴をあげた。
彼はホーマーではないという。確かに全身緑色で触手が生えてはいたが。
そこにもう一人のホーマーが帰ってきて大騒ぎになるが、ホーマーはどちらも相手がホーマーだと思い、家族もだんだんどっちが本物のホーマーかわからなくなってきた。
そこで医者に相談してみるが・・・。

 レジナの「ゼッキョー、ゼッキョー」という絶叫(笑)のあとの、「ふーっ、とってもよかったわ、ホーマー!」というセリフでひっくりがえった(笑)
そして最後も。
なんじゃこれは(笑)

その町の名は?
 「研究所」のグレゴリー・スミルノフがエピクトに指示した研究は「失われたがそれがなにかわからないもの」を突き止めるというもので、あまりにも漠然としているにも関わらず、エピクトはあらゆるデータを照合した結果、驚くべき事実を突き止めるが・・・。

 辞典の欠落の件とか、「失われた形跡」が面白すぎる。
そして失われたものがこれまた面白すぎる。
なんか恨みでもあるのか(笑)

他人の目
 「研究所」のグレゴリー・スミルノフとチャールズ・コグズワースは、最近発明した再現相関機(タイムマシン)のほろ苦い結果について話し合っていた。
発明は成功だったが、その結果歴史の真実がわかり、それはことごとくロマンをぶち壊す結果になったのだ。
そしてチャールズが完成させたという大脳走査機にも、同じ心配をするグレゴリーだった。
大脳走査機は他人の目で世界を観ることができる機械だった・・・。

 他人の目から観た世界は全く異なっているかもしれないと化夢宇留仁もよく考える。
例えばAさんとBさんの視界が階調反転していても、それぞれの話は食い違わないし、その違いは露見しない。
その違いを実際観てみようという機械というわけで、同じようなことを考えるんだとラファティに(勝手に)親近感を覚えた(笑)
この「研究所」シリーズはどれも面白い。

一期一宴
 マックスキーという奇妙な男がいるという連絡を受けたジョン・サワーワインは、早速「バーナビイの納屋」という酒場に行ってみた。
マックスキーは死人のようなやせ細った男だったが、大量に飲み食いするうちに身体が光り輝き、どんどん元気になっていった。
意気投合した2人はその後も飲み歩き、暴れまくるが、マックスキーが何百年も前の記憶があると話し・・・。

 なんだかよくわからんが楽しそうなのでよろしい(笑)

千客万来
 突然スカンディアの人々が地球上に現れ、猛烈な勢いで人数を増していった。
あらゆる場所はスカンディア人で溢れかえり、それは地球人のプライバシー空間にまで及び・・・。

 なんだかよくわからんが楽しそうなのでよろしい(笑)・・・ってよくないか(笑)

 ちうわけで初ラファティだったが、実に面白かった。
奇想もそうだが、それに巻き込まれた人々の方が奇妙なほど物分りがよかったり、変に頭がよかったり(特に子供)と、テンポを落としそうな部分はスパッと無くしているところが素晴らしく、むしろ本題の奇想部分よりも目立っているかも(笑)
とはいえやはりどの作品もまさに「奇想」と言えるものばかりで、面白いのだが作品ごとに「そっちかい!」とか「結局そこかい!」とか「なんでやねん!」とか、全然違う方向に脳が揺さぶられるので、少々疲れる。
この内容で全21作、合計500ページ超えはしんどすぎる(笑)
分冊にしてほしかった(笑)
 巻末の解説ではラファティのコンベンションでの様子など、彼の人となりを紹介しているのだが、SFを書くきっかけのしょうもなさや、コンベンションではまともに会話せずに人にぶつかりまくったり、ラファティに会った編集者のジュディス・メリルの「知性のかけらも感じられない」という感想(笑)など、これがまた爆笑ものだったと記しておく。

20211121(mixi日記より)
20211208


銀河辺境シリーズ10
星間運輸船強奪さる
A・バートラム・チャンドラー著/野田昌宏訳

 グライムズは窮地に陥っていた。貴重な動物を輸送中に殺してしまったのだ。
リトル・シスター号は差し押さえられ、なんとか罰金を払うために軌道上に放置されている輸送船ブロンソン・スターの管理人となった。
ところがその輸送船がハイジャックにあい・・・。

 前半はハイジャックの言うなりでつまらないが、中盤でグライムズが選択権を取り戻して古い馴染みの猫のようなカンガルーのような異星人が出てくる頃から面白くなってきて、一段落。
今回はあっさり終わったと思いきや、まだページが残っている。
首を傾げながら読み進めると、そこからはまさに予想外のホラー展開が(笑)
そして懐かしいキャラクターも再登場し、最後は新展開を匂わせて終幕。
なかなか意外性があって面白い巻だった。
 それにしても解説で作者に手紙を出そうと言って、チャンドラーのオーストラリアの住所がばっちり書かれているのには笑ってしまった(笑)
それと口絵のホバータンク・・・全く活躍してないんですけど(笑)

20211122(mixi日記より)
20211209


007 ムーンレイカー
ルイス・ギルバート監督

 アメリカからイギリスへスペースシャトル「ムーンレイカー」を空輸中だったボーイング747が墜落。しかし墜落現場にシャトルの破片が見つからなかったことから、ムーンレイカーは奪われたものと推測された。
緊急帰還命令を受けて空路をアフリカからイギリスに向かっていたジェームズ・ボンドは添乗員の美しい女性といい感じになっていたが、彼女は暗殺者だった。
更にどこに隠れていたのかジョーズまで・・・。

 多分3回目くらい?全然覚えてなかったが(汗)
上記の説明はまだオープニング前の少事件までで、その後ムーンレイカーを作ったドラックス社のあるカリフォルニア、ヴェニス、リオ、アマゾン、更には宇宙空間まで、目まぐるしい冒険が繰り広げられる。
あまりにも荒唐無稽すぎると評価が低い本作だが、化夢宇留仁は非常に面白く観れた。
まず冒頭のパラシュートアクションだが、今なら絶対撮影を許可されない非常に危険なスタントで、その分迫力満点でCGじゃないアクションの醍醐味を満喫できる。
そして地味にそれに続くオープニング映像もCG無しでどうやって撮ったのか謎なカメラワーク(笑)
で、本編だが、本作は上記の通りあまりにも荒唐無稽すぎるというイメージがついてしまっているが、宇宙に飛び出すまでの展開はまさに見どころ満載でテンポも素晴らしく、コメディ部分は素直に笑えて、バカアクション映画(笑)としてはとりあえず文句をつけるところが見当たらなかった。
特にジョーズが出てくるごとに自分の怪力のせいで自爆するのが面白い。
宇宙空間に出てからも、相変わらずの壮大なセットと巨大なミニチュアで、目を離せない。
お色気(笑)も頑張っていて、特に前半に出てくるパイロットのお姉さんが衣装もエロエロで素晴らしい。可哀想な顛末だったが・・・。
 突っ込むべきところにも言及しておく。
ボンドが死にそうになった耐G訓練機だが、そもそも加速度と速度を混同している上に、あの向きでは横Gと風圧に耐える機械になってしまっている。
 失われたシャトルの行方を探すのに、まずその製造元を調査する理由が分からないし、一切説明されていない。
 ムーンレイカーという名前が(原作のこともあるので仕方がないのだが)、シャトルの名前としては不適切。月まで行けないし(笑)
 それとこれは面白かったポイントでもあるのだが、突然現れてジョーズとラブラブになった金髪メガネ巨乳&怪力(笑)の彼女は何者(笑)?

20211123(mixi日記より)
20211210


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