エコープラクシア
ピーター・ワッツ著/嶋田洋一訳

 宇宙船テーセウスが異星生命体と接触してから7年、研究施設で吸血鬼が所員を皆殺しにして脱走した。
 その少し後、オレゴンの砂漠で生物相の調査をしていた生物学者ダニエル・ブリュクスは、戦闘用ゾンビの接近を探知し、両球派の修道院に逃げ込む。
修道院では確保していた人工竜巻で進攻者たちを撃退するが・・・。

 ちうわけで「ブラインドサイト」の続編である。
あの尖りまくっていた前作の続きなので、やっぱりこっちも尖りまくりで、とりあえず感情移入できるキャラクターは1人もおらず、ドラマツルギー的なものも一切ないのも同様。
しかし今回は主人公が特に特殊な能力を持っているわけではなく、巻き込まれ型っぽい展開になるのでまだとっつきやすいかも。ただし主人公の視点でもわけがわからない状況が続くので、結局読者もわけがわからないのだが(笑)
砂漠でデジタル遺伝子(?)を持った生物の調査をしていたら、いきなり徒歩で秒速9mで迫ってくるゾンビの大群に包囲されるのだ。
その後知らない間に巨大宇宙船に乗り込まされているのだ(笑)
 物語としては巨大宇宙船「茨の冠」に乗ってテーセウスが消息を絶った太陽系外縁部に向かうのかと思いきや、テーセウスにエネルギーを補給していたイカロスがある太陽近辺でグズグズしていたのが意外で少し残念だった。
で、結局「ブラインドサイト」から続く謎に関してだが・・・
<ネタバレ>
 基本的に一番の謎である異星生命体の目的は不明なまま。
前巻の主人公シリの父であるジム・ムーア大佐が主要キャラクターの1人なのだが、彼が前巻の最後にシリに語りかけるシーンが別視点から描かれる展開が無かったのが納得いかない。
最後のオチだが、ダニエルの役目はいいとして、その役目が必要だという理由が存在しないのが納得いかない。
そんなまどろっこしいことをしなくても目的を達成することは簡単だということは、前巻の冒頭の出来事でわかっているのに。
 ちうわけで色々と納得がいかなかったが、こういうタイプの作品ですっきりと終わってくれるとは元々思っていないので、ある意味予想通り。
相変わらず内容の割には読みやすいし、ちょっととんがったSFを読みたいというときには悪くない選択肢のように思った。

20211030(mixi日記より)
20211122



SF英雄群像 スペース・オペラへの招待
野田昌宏著

 スペース・オペラの伝道師たる著者が、アメリカでの出版状況や歴史、そして主な作品の内容を紹介したもの。
この作品の紹介は古くはローマ帝政期のギリシャ人作家ルキアノスの「本当の話」や、あのシラノ・ド・ベルジュラック著の「月と太陽諸国の滑稽譚」にはじまり、ダイム・ノベルの「フランク・リード二世シリーズ」、「エジソン・シリーズ」(あの発明家のエジソンが主人公/笑)など、黎明期の作品を紹介。その後は「火星シリーズ」「バック・ロジャーズ」「宇宙のスカイラーク」「アーコット・モーリー・アンド・ウェード」「ジェイムスン教授」「鷹のカース」「レンズマン」「ノースウェスト・スミス」「ラジオ・マン」「ゲリー・カーライル」「ジョン・カーステアズ」「タビー」ときて、最後に大本命「キャプテン・フューチャー」を紹介して終わる。
ここまででタイトルを挙げていないが、簡単な紹介をされている作品はまだまだある。
ちょっと気になったのは各シリーズの内容紹介が一部抜粋の形で、まあまあそのまま載せているのが多かったことで、なぜだろうと思ったら初出はSFマガジンの連載で、当時は翻訳出版されるとは予想もしていなかったらしい。なるほど。
それにしてもそんな頃にここまで詳細な内容を完成させた元帥は流石としか言いようがない。
 化夢宇留仁が紹介されたシリーズの中で目を見張ったのは(著者の思惑とは違い/笑)、レンズマンシリーズだった。
内容紹介だけで感動(笑)
やはりレンズマンは化夢宇留仁の中では別格らしい。

20211031(mixi日記より)
20211123



007 ゴールドフィンガー
ガイ・ハミルトン監督

 ボンドはメキシコで麻薬王ラミレスの工場を爆破する。
マイアミでCIAエージェント、フェリックス・ライターと再会し、大富豪オーリック・ゴールドフィンガーのカードのイカサマを見破る。
ゴールドフィンガーの部下で彼に相手の手の内を教えていたジル・マスターソンとお近づきになるが、何者かに襲われたボンドは気絶し、目が覚めるとジルは全身に金粉を塗られて死んでいた。
ロンドンに戻ったボンドは、ゴールドフィンガーによる金の密輸を暴くという指令を受ける。
ゴルフ場で偶然知り合ったように装い、ゴールドフィンガーに近づくが・・・

 007シリーズで化夢宇留仁が最も好きな映画である。
前作「ロシアより愛をこめて」の後半にあった張り詰めた雰囲気は消え去り、全編のんびりモード。
原因は悪の親玉ゴールドフィンガーで、見るからに愛嬌があって小物感が漂う外見に、やっていることもカードのイカサマとかゴルフのイカサマとか、15年温めたオペレーション・グランドスラムも壮大なのかしょぼいのかよく分からない(笑)計画で、どこをとっても魅力的(笑)
そのゴールドフィンガーのボディーガードがシリーズ中2番めの強さを誇る不気味な東洋人オッドジョブ(1番はもちろんジョーズ/笑)で、これがまたすごくとぼけていつつ超冷酷という面白キャラで、映っているだけで楽しい。
ボンドも前作と比べれば大活躍しており、特にラスト近くの起死回生の○○○は、シリーズでも随一の成功を収める(笑)
また前半のスイスの画も素晴らしく、初登場のアストンマーチンがスイスの景色に映えてかっこいい。
 まあ映画として真面目に見れば山ほどツッコミどころはあるのはもちろんなのだが、そんなこと忘れてのんきに楽しむのが正解な作品だと思う。
ほんとに何回観ても楽しい(笑)

20211101(mixi日記より)
20211124



2010年宇宙の旅
アーサー・C・クラーク著/伊藤典夫訳

 宇宙飛行学会議議長の座を降りたヘイウッド・フロイドは、ソ連の宇宙船がディスカバリー2号よりも早く、遺棄されたディスカバリー号と木星近くに存在する巨大なモノリスと接触するという情報を受け取る。
もう自分には関係のない話だと思っていたのだが、結局彼はソ連の宇宙船アレクセイ・レオーノフ号に同乗することに。
ところが更に中国の宇宙船が恐ろしいスピードでレオーノフ号を追い抜いてゆき・・・。

 色々とややこしいのだが、本書は映画版「2001年宇宙の旅」の続編である。
したがってディスカバリー号が遭難したのは木星ということになる。
前作「2001年宇宙の旅」は実質はスタンリー・キューブリックとの共著といえるものだったが、本作は完全にクラークの単独作品である。
そもそも執筆の条件の中にキューブリックを絡ませないというのがあったという(笑)
 物語としては完全に前作とつながっているが、全編クールな雰囲気だった前作と比べ、本作は熱い展開が繰り広げられ、クラークらしい感動的なシーンも多い。
例えば中国船の重力ブレーキ成功への拍手であったり、中国船の推進剤量を無視しているとしか思えなかった速度の謎、そしてソ連船内でロシア人たちと少数のアメリカ人達が一緒に「エイリアン」を観ていたり(笑)
 化夢宇留仁は前に映画版を観ていたのだが、ストーリーの大枠は原作のままだったようだ。
後半のこれぞハードSFと言える展開も大いに盛り上がるし、復活したハルの態度とその結末も、そしてまさかの木星むにゃむにゃ(笑)といい、全編とてもおもしろく読めた。
要するに流石クラーク先生としか(笑)

20211103(mixi日記より)
20211125



2010年
ピーター・ハイアムズ監督

 を観た。再見。
最初に観た時の感想
 ヘイウッド・フロイド博士はソ連の科学者からソ連船がディスカバリー号に先に着くことと、ディスカバリー号の軌道がずれてこのままだとイオに落下することを知らされ、ソ連船レオノフ号に同乗することを決意する。
レオノフ号は道中木星の衛星エウロパに生命体が存在するはずの証拠を発見し、無人探査艇を送るが、生命体を目視できそうになった瞬間に何かが起こり、探査艇は破壊される。木星の重力と大気で減速したレオノフ号は衛生イオの軌道上で回転するディスカバリー号と邂逅し・・・。

 原作を読んだので映画も見直してみた。
大枠では原作のストーリーを忠実に再現していて楽しめた。
しかしいくつか注意する点がある。
 まず前作「2001年宇宙の旅」と比べたら普通のアメリカ映画であり、あの感動をもう一度と思ったら落胆するのは間違いない(笑)
 原作で大いに盛り上がった中国船の存在は丸ごとカットされており、非常に残念だった。
 レオノフ号の船内がディスカバリー号ほどに洗練されていたらそれはそれでおかしいのだが、赤青黄緑の原色の光の連続はやめてほしかった(汗)
 原作ですごく楽しめたのがソ連クルーとアメリカ人クルーの和気あいあいとした雰囲気だったのだが、それは大きく削がれ、それどころか地球で米ソが戦争状態に突入してしまい、コミュニケーションさえまともに取れない状況に(汗)
これは短い時間内でドラマを盛り上げ、オチに持ってゆくための手段としては納得できるのだが、なにしろ原作がいい雰囲気だったので非常に残念。
 チャンドラ博士がハルに嘘をつく。
これは原作からすると考えられないのだが、それもラストの流れではハルのセリフに泣かされるいい感じの作りで、まあよし(笑)
 それとフロイド博士の離婚がカットされた。
これはどうでもいい(笑)
 思うに映像作品としての2001年はやはり特別なんだとこの映画を観るとよく分かる。
どこもかしこも凡庸で、悪くはないしむしろすごく頑張って作っているのだが、あれと比べてしまうとどこもかしこも相手にならない。
しかし原作を丁寧に映像化している良映画なのも確かなので、前作と比べずに楽しみたい。

20211103(mixi日記より)
20211126


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