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LIDIA


 
 

■■■ 1 ■■■

2100-125-1117 小型護衛艦ガグギダス/リディア星系/グリッスン星域
 

 ジャンプアウト警報がなり,総員が戦闘配置につき,核融合炉の出力が最大に設定された.2100,小型護衛艦ガグギダスは,リディア星系から200,000kmのジャンプアウト航路帯に到着した.A-EMSを3回発信して周囲を探る.当面の脅威は確認されなかった.これから向かう予定の第5惑星Lydia I Iota の衛星軌道上に宇宙船が1隻確認された.恐らくこの星系を管制している小型護衛艦だろう.

 艦橋内では直ぐに艦のチェックリストが読み上げられ,異常が無いことが確認された.残燃料を確認する.2,650klからジャンプ用燃料1,350klを消費したが,パワー系燃料は1300kl中50klしか使用していない.パワープラントの出力を25%にまで下げると,リディアへの航行を命じた.2G加速1時間,減速1時間で航路設定をすると,通常空間当直を宣言した.内規によれば,通常空間当直では,艦橋に常時2名の乗員が詰めなければならない.最初の当直は,ゼム=ジェイコブ大尉アリス=アギルタット兵長だ.

 リディア星系は色々と問題の多い星系であるが,とにかく帝国国境の問題児であることは確かだ.第5次辺境戦争が終わってからこの方,どの星域においても安定した星間レーンが確保されたためしはなかった.幾つもの自由貿易船組合から強い要請が発せられたが,グリッスン星域海軍は海賊行為の横行を十分に防げていない.予算は帝国海軍の再建に回されており,治安維持,捜査に当たる小艦艇が決定的に不足しているのだ.

 小型護衛艦ガグギダスの任務は明快であった.このリディアで航路警備に当たり,海賊行為,帝国内への密入国,密輸を防ぐのだ.
 

Heaven & Earth

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2100-125-1117 小型護衛艦ガグギダス/リディア星系/グリッスン星域

 ゼム=ジェイコブ大尉は航宙プログラムからリディア星系についての必要なデータを呼び出し,再度確認を行った.
 主星M4Vの赤色巨星,伴星はM0Yの小振りの赤色恒星である.
 主星系は,9つの惑星を持っている.
  第1惑星Lydia I Delta  F453100-5は直径7,000km表面温度2,000度の灼熱の惑星.原始的な観測基地があり数人が駐屯している.
 第2惑星Lydia I Epsilon F240133-5も同様に,直径3,800km表面温度1,600度の灼熱の惑星.原始的な観測基地あり数人が駐屯している.2つの小さな月を持つ.
 第3惑星Lydia I Zeta Y577100-5もまた似通ったものである.直径8,500km表面温度900度の灼熱の惑星.原始的な観測基地あり数人が駐屯している.
  第4惑星Lydia I Theta G839321-5は.直径12,300km,表面温度360度の惑星で,総人口9,000人である.多くは鉱物資源を採取する50人規模の採掘場が100箇所以上,数人規模の採掘場が600以上存在する.宇宙船の発着設備は惑星上10箇所に点在している.
 第5惑星Lydia I Iota E110430-6は,リディア星系の首星である.直径1,760km,表面温度230度の惑星で,総人口90,000人である.多くは鉱物資源を採取する50人規模の採掘場や農場がなんと1,600箇所以上存在する.宇宙船の発着設備は惑星上10箇所に点在しているが,このうち恒星間宇宙船の発着を許可しているのは6箇所だけである.
 第6惑星Lydia I Kappa XC00000-0は,直径241,600 kmの巨大なガスジャイアンとで,9つの衛星を持つ.衛星のうち2つには観測基地が設けられている.
 第7惑星Lydia I Lambda XC00000-0は,直径246,400 km kmの巨大なガスジャイアンとで,6つの衛星を持つ.
 第8惑星Lydia I Mu F867300-5は,直径12,300km,表面温度-120度の惑星で,総人口9,000人の全てが,一つの都市に集中している.衛星は1つ.
 第9惑星Lydia I Nu G470300-5は,直径6,880 km,表面温度-130度の惑星で,総人口9,000人は,36箇所の50人規模の採掘所と1000箇所以上の数人規模の採掘所に居住している.衛星が2つある.
 伴星系は,主星系から僅か0.3AUのところを回っている.F100000-0 直径720 kmの小さな衛星を有しているが,表面温度は4,400度と極めて高い. 

 

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SYSTEM DETAILS
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System Name: Lydia

PBG: 902

PRIMARY SYSTEM M4 III

1  Companion Star

3  Lydia I Delta                   F453100-5 

4  Lydia I Epsilon                 F240133-5 
 15 Lydia I Epsilon Ay              YS00000-0 
 30 Lydia I Epsilon Bee             H100000-0 

5  Lydia I Zeta                    Y577100-5 

7  Lydia I Theta                   G839321-5 
 4 Lydia I Theta Ay                Y400100-5 
 8 Lydia I Theta Bee               Y620000-0 

8  Lydia I Iota                    E110430-6 Ni 

9  Lydia I Kappa                   XC00000-0 
 5 Lydia I Kappa Ay                Y200200-5 
 6 Lydia I Kappa Bee               H642100-5 
 7 Lydia I Kappa See               Y640200-5 
 8 Lydia I Kappa Dee               H500000-0 
 10 Lydia I Kappa Ee                YS00000-0 
 11 Lydia I Kappa Eff               H100000-0 
 30 Lydia I Kappa Gee               H100000-0 
 40 Lydia I Kappa Aitch             Y604000-0 
 45 Lydia I Kappa Eye               Y230000-0 

10  Lydia I Lambda                  XC00000-0 
 4 Lydia I Lambda Ay               HS00000-0 
 5 Lydia I Lambda Bee              Y431000-0 
 6 Lydia I Lambda See              Y451000-0 
 8 Lydia I Lambda Dee              Y300000-0 
 10 Lydia I Lambda Ee               H300000-0 
 50 Lydia I Lambda Eff              Y200000-0 

11  Lydia I Mu                      F867300-5 
 12 Lydia I Mu Ay                   Y531200-5 

12  Lydia I Nu                      G470300-5 
  7 Lydia I Nu Ay                   H300000-0 
 12 Lydia I Nu Bee                  Y100000-0 

BINARY SYSTEM M0 VI

0  Lydia II Alpha                  F100000-0 
 8 Lydia II Alpha Ay               HS00000-0 

Created using 'Traveller Heaven & Earth (V 1.0.4)'
Written by Stuart W Ferris, Copyright c2000
MegaTraveller, Copyright c1987, Games Designers' Workshop
Traveller is a registered trademark of Far Future Enterprises
Portions of this material are Copyright c1977-2000 Far Future Enterprises
Date Created: 02/02/17, Random Number Seed: 1
 

 
Heaven & Earth

 

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2120-125-1117 小型護衛艦ガグギダス/リディア星系/グリッスン星域

 ゼム=ジェイコブ大尉は,第5惑星Lydia I Iota E110430-6 のデータを詳細に確認した.リディア星系の首星であるLydia I Iota は,直径1,760kmの小さな惑星である.重力は0.122G,公転半径は19.6 AU,80,763日で太陽を回る.自転周期は21時間.夜は屋外での活動も可能だが,昼間は200度を超える灼熱地獄となる.地軸は45度も傾いている.

 大気は僅かに0.07気圧,宇宙服無しでは屋外に出ることはできない.昼間は200度を超える灼熱地獄,夜は丁度過ごしやすい気温となる.

 惑星上には海どころか天然の水は一滴も無く,宇宙船の燃料は隣接するガスジャイアントからマスドライバーラインで運びこまれている.

 総人口は90,000人である.多くは様々な鉱物資源を採取している.惑星上には50人規模の採掘場や農場がなんと1,600箇所以上も存在している.宇宙船の発着設備は惑星上に10箇所に点在しているが,このうち恒星間宇宙船の発着を許可しているのは6箇所だけである.何れもクラスEの最低限の宇宙港で舗装がなされている程度だ.
 住人の多くは地上生活にあこがれたグリッスン出身の鉱夫達の末裔である.彼等は自分達の土地を保有していることに誇りと生き甲斐を感じている.特異な注意しければならない習慣は,原色に近いような色の食べ物がタブーであることであろう.また全員が一度は宇宙に,そして他星系に出なければならないという習わしも息づいている.
 
 

Universe

 政治形態は,一言で言えば典型的な独裁制だ.

 治安は悪く,自分の身は自分で守るのが基本で武器の制約もない.
 テクノロジーレベルは4-7といったところで,この惑星で宇宙船を修理することは基本的には不可能だ.

 ゼム=ジェイコブ大尉は,星系の貿易数量について過去のデータを検索した.2週間当たりの積載貨物総量は1,000t強,旅客数は600人程度である.貿易規模は4に分類される.テクノロジーが低く,人口の少ない星系の典型で,貿易量の過半が星系を通過していく.大型船,中型船が入港することはまず考えられず,1日に2隻の1000t未満の小型船が入港する.これだけのローカル宇宙港である.軌道上に宇宙港施設がないのはもちろん,地上施設も最低限のスペースしかない.
 惑星の100直径は176,000kmであるから,ジャンプ不可能域は差し渡し14PUの広さとなる.恒星間宇宙船がジャンプ可能域に達するまでの時間は2時間程度であるから,高速の密輸船にとってはまさに夢のような星系と言えるだろう.
 

Heaven & Earth

 
 

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2120-125-1117 小型護衛艦ガグギダス/リディア星系/グリッスン星域

 リディアは帝国国境を構成している星系の一つであるが,海賊や密輸業者にとっては,帝国の脇腹に開いた大きな風穴のように見えるのが現状である.その理由は,大きな公転軌道を持つ2つのガスジャイアントの存在である.星系の管理を厳重にし帝国内への密入国を阻止するためには,これら2つの天体に対しても監視船を置かねばならないが,現状でそれだけの警備艦艇を配備できないでいるからである.

 第5次辺境戦争が始まる直前,リディアには常時12隻の小型護衛艦が配備され,厳重な国境警備がなされていたが,今では僅かに5隻がその任についているに過ぎない.さりとて,地表の治安も維持できない惑星政府に,星系の治安が維持できるはすがない.
 
 小型護衛艦ガグギダスは,ジャンプアウトすると,リディアの衛星軌道上を巡る同型の小型護衛艦クラビダスに連絡をとった.クラビダスにはSPA(宇宙港管理機構)の係官が乗り込んでおり,リディアの交通管制も一手に取り仕切っている.
「こちら小型護衛艦ガグギダス.リディア星系に到着.2Gの加減速で衛星軌道に到達する見込み.」
 彼我の往復距離は400,000km,通信には約1秒強のリアクション誤差が生じる.
「クラビダスよりガグギダスへ,ようこそリディアへ.第7329護衛隊への着任を心より歓迎する.そろそろ来る頃だと思っていた.本艦の座標はリディアローカル000-030,ベクター000-120である.ガグギダス,NTDSデータリンク準備.」
「了解.そちらの艦長とお話したい.こちらは艦長ゼム=ジェイコブ大尉.」
「お待ち下さい.」
 

Shade, Terragen & Universe

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2300-125-1117 小型護衛艦ガグギダス/リディア星系/グリッスン星域

 クラビダスの艦長兼第7329護衛隊先任指揮官,マントン少佐は眠そうな目を擦りながら,小型護衛艦ガグギダスにリディアへの表敬訪問と,リディア内での拿捕委任状の受領の事務手続きを行うように命じた.

 そのため,小型護衛艦ガグギダスは,リディアのローカル宇宙港の1つに降下していった.衛星軌道にはマスドライバーの自動回収システムがある他は,設備がまったく無い.低重力の地表上に全ての施設が設けられている.

 リディアの宇宙港はEクラス,掛け値無しのローカル宇宙港である.地上港は全部で6箇所.ただし,他の星系のEクラス宇宙港が,整地されたスペースだけなのに対し,リディアの宇宙港には岩盤をくり抜いた格納設備が付随していた.地表が昼の側に回った時の赤色巨星の凄まじい照りつけから宇宙船及び整備員を守るためだ.小型護衛艦ガグギダスが目指したベネッサル宇宙港は上手い具合に夜の側だった.

 小型護衛艦ガグギダスは,リディアのベネッサル宇宙港に着陸した.ベネッサル宇宙港はリディア中で最も大きな宇宙港と呼ばれている.離着床は1km四方はある整地されたスペースで,車輪トレーラー型の簡易な管制所と,計器着陸のための電波発信塔,着陸誘導灯が付属している.

 小型護衛艦ガグギダスは,ゆっくりと地上滑走し,3箇所あるトンネルのうちの1箇所に向かった.ガグギダスが誘導された格納庫は,岩盤をくり抜いた幅500m奥行き100mの大きさで,奥の壁面にはドッキングゲートが5つ設けられていた.格納庫の入口には電磁エア=スクリーンが貼られていて格納庫内の気圧が保たれている.この設備はEクラス宇宙港には相応しくないが,リディアの気象の特状を考えれば理解できる.誘導員の指示に従い,ガグギダスは200t自由貿易船の隣に停止した.格納庫の奧からドッキングゲートが延びてくると,ガグギダスの舷側に取り付いた.

 

Shade & Terragen

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0100-125-1117 ベネッサル宇宙港/リディア星系/グリッスン星域

 ドッキングゲートの先は,ベンチが10個ほどある薄暗い小さな待合室だった.中央に設けられたブルーバックのモニタ画面は,宇宙船の離発着時刻表をひたすらスクロールしていた.その横の2次元TVは,地元のニュースらしきものを放映している.期待に反して待合室に出迎えはなかった.
 
 ゼム=ジェイコブ大尉は,ホルスターの磁気ピストルを確認すると,長身で筋肉質のナロウ=ジキュシュガル上等兵と,女性海兵隊員のシカー=クルイエル掌砲軍曹を引き連れて通路の奧へ進んだ.二人とも折り畳み式ストックと電子照準システムを装着した磁気SMGを肩から吊している.またサイドアームとして,磁気ピストルをベルトから吊していた.防具はクロースだ.

 連絡通路は格納庫の奧に沿ってまっすく走っていた.途中,同じような小さな待合室を2箇所通りすぎ,右に曲がると空港のメイン区画に出た.そこはもう少し大きなスペースであった.ホールの床にはSPAの紋章,SPAの出入国係官が一つしかないラッチに入り,武装した海兵隊員がロビー中央の速射磁気砲を備えたトーチカに陣取っていた.それがリディア国際線ゲート,EXTラインだった.

 ベネッサル宇宙港のSPAの係官は,僅かに3名であった.このうち2人は現地雇用職員である.後は第7329護衛小戦隊が海兵隊員5名を警備に貸し出しているだけだった.この他に国内航空路線を運用調整する現地係官が2名,簡単な整備,補給を担当する作業員が5名,これがこの宇宙港の全てだった.
 
 国内線は20人乗りの大型救命艇が1日3本,国際線はリディア政府の援助を受けた自由貿易船が1日に1本の頻度であった.従って最終便がつくとあっという間に宇宙港は閉まってしまう.

よい星空を
 年輩の女性SPA係官は,そう言って興味なさそうにゼム=ジェイコブ大尉の身分証を返してよこした. 

 ラッチを出ると5人掛けのシートが10かそこいら並ぶ,薄暗い宇宙港のメインロビーだった.そこには40位のスペーススーツ姿の男が待ち受けていた.オートライフルとクロースで武装した護衛を2人連れている.
「ゼム=ジェイコブ大尉?」
「そうです,そちらは?」
アイク=アイグル警部です.」
 ゼム=ジェイコブ大尉と同じような体格のその男は,リディア政府の司法官であると名乗り,身分証明書を示した.互いに念入りな身分確認が交換されると,一行は小さなロビーを出た.ロビーの外はまだ地下で,そこは車よせになっており,他に200台ほどが止められる地下駐車スペースが広がっていた.

 丁度,国内線で到着した客を乗せるために,2台の路線バスエレカが車よせに近づいてくるところだったが,その間を強引に縫って,8人乗りのワンボックス=エレカが接近してきた.
 

 


 くたびれた外見とは反対にエレカの中は総皮張りの見事な内装だった.エレカは,エアロックを通って地上に出るとハイウェイを時速180km/hで疾走した.地表はまだ夜であったが,水平線を次第に赤色巨星が赤く染め始めていた.次第に明るさが増してくると,地表の様子が次第に理解できてきた.そこには,荒れ果てた大地.草木も生えない,水一滴も無い死の世界が広がっていた.

 車は,惑星上で唯一のリゾートホテルに車を乗り入れた.リディアを訪れる観光客の多くはこのホテルに泊まる.エアロックから入り地下駐車場に車が止まると.司法官が一行をせき立て,上階のロビーに案内してくれた.SMGはロビーで取り上げられたが磁気ピストルについては携行を許可された.

 リディアでの決済は全て現金が基本だ.もちろん帝国紙幣も使える.今回はリディア政府持ちであるが.そろそろの夜が明けるので,世界は眠りにつく.司法官達は翌朝迎えにくると言い残すと慌てて辞去した.リディアでは昼夜が逆転しているのだ.昼間の灼熱地獄の中で活動しようと考えるものはこの惑星にはいない.

 

Shade & Terragen

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1000-126-1117 ベネッサル=ランディング=リゾート

/リディア星系/グリッスン星域


  現地時間0800,ゼム=ジェイコブ大尉は目覚めると,日没前の壮大なページェントを眺めた.迎えの時間まではまだかなりある.ホテルのメイドの勧めもあり,ドーム式のリゾートプールに出かけることにした.ドームは,円柱形の2つの宿泊棟を結ぶ形で設けてあり,夜になると遮熱ドームが開かれ,プラスチック屋根越しではあるが,夜空の下でのリゾート気分が味わえる.人工重力は0.5Gに設定されていて,なかなか楽しめる設定になっていた.

 水着は宿泊棟の1階の売店でCr30で買えた.バスタオルはプールの沸きでレンタルしろとのことだった.
 

 

Shade & Terragen

  ひと泳ぎしてドーム内のテラスエキゾチックな朝食を済ませると,ロビーで迎えの車を待った.8人乗りのエレカは再びハイウェイを疾走し,一行を政府庁舎まで連れていってくれた.ベネッサル市街は一応首都にはなっていたが,1km四方の広さの小さな街で,街区も閑散としていた.エレカは市街で唯一の高層建物である円形の合同庁舎の駐車場に滑り込んだ.

 駐車場の上階にあるエントランスホールは,3階層吹き抜けのエレベーターホールで,壁面には省庁の室課名が書かれたプレートが貼られていた.建設されてからかなりの年月がたっているのだろう,人工輝石を基調とした内装にはかなりの古さが感じられた.中央には受付嬢達のブースがあり,彼女達がてきぱきと訪れた客達をさばいていた.ビルは10階建てだった.一行は最上階に案内されると,司法担当大臣との懇談に望んだ.
 

Shade & Terragen
 

 政府から小型護衛艦ガグギダスへ,入国手続きに関する業務委託が行われ,併せてリディア星系内での拿捕委任状が発行された.その後,簡単な会食となった.そこでは,密入国者の問題や国境突破船の実状や手口などが話し合われ,小型護衛遺憾ガグギダスへ期待すること大であることが述べられた.地元のマスコミが表れ何枚か写真を撮っていった.

 担当大臣の前を辞すると,司法当局を表敬訪問した.といっても1フロアの半分も無いスペースだ.簡単な挨拶が交わされ,再びエレカは一行をリゾートホテルに戻してくたれた.

 ゼム=ジェイコブ大尉は,ナロウ=ジキュシュガル上等兵と,海兵隊女性隊員のシカー=クルイエル掌砲軍曹を引き連れてホテル内の最上級のレストランで食事をし,免税店で無駄な金を使い,最後にバーで少し飲んだ.
 


■■■ 8 ■■■

1500-127-1117 ベネッサル宇宙港/リディア星系/グリッスン星域

 ベネッサル宇宙港では,既に燃料の再補給作業が始まっていた.宇宙港にはSPA所属の整備員が存在しないため,第7329護衛小戦隊は連絡,支援業務に,国内線を担当している地元の港湾労働者を臨時に雇って使っていた.しかし機関士のシリア=デルグビール三等兵曹は彼等を全く信用していなかった.磁気ライフルで武装した海兵隊員の厳重な監視下のもと,燃料再補給作業は行われた.

 ゼム=ジェイコブ大尉が艦に戻ると真っ先に,機関士のシリア=デルグビール三等兵曹の抗議が待ち受けていた.燃料の質が悪いのだ
「タンク1を一杯にしたところで気づきました.酷い不純物の量で精製装置をかけても取り除かれるものではありません.」
 彼女は独自の判断でフィルターを3重にするように燃料ホースを改造したが,そのおかげで補給効率は大幅に落ちていた.

 自分のマシンを愛する彼女は,宇宙港の整備士達が艦に触れることを頑なに拒絶した.気の弱い大柄な看護士リカルト=ハイリジルク三等兵曹がこのとばっちりを受けることとなった.シリア=デルグビール三等兵曹のこだわりの整備点検につき合わされることとなったのだ.彼女の指導というか,人使いの荒さは人並みを外れていた.

 第7329護衛小戦隊からは1週間の休暇が通知された.まだ上陸していない乗組員と海兵隊員の半数づつがベネッサル=ランディング=リゾートを交代で訪れたが,ゼム=ジェイコブ大尉は,治安の確立されているベネッサル地区より外には絶対に出ないように厳命した.

 リカルト=ハイリジルク三等兵曹は.シリア=デルグビール三等兵曹につき合わされたため上陸の機会を失った.ゼム=ジェイコブ大尉は援助を申し出たが,これはきっぱりと拒絶された.
「素人は足手まといになる.」
 の一言であった.
 

Shade & Terragen

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1600-130-1117 ベネッサル宇宙港/リディア星系/グリッスン星域

 恐れていた,揉め事は上陸中の乗組員では無く,残留組から発生した.機関士のシリア=デルグビール三等兵曹が揉めごとを起こしたのは,空港に1軒しかない小さなレストランの一つだった.彼女の方は空港作業員達に絡まれただけであり,悪いわけではないのだが,拒絶の仕方が悪かったらしい.

 駆けつけた宇宙港駐在の海兵隊員により事なきを得たが,彼女の方は3発も殴られた上に,有り金Cr500を巻き上げれていた.作業員達としては,技術者として彼女に馬鹿にされた腹いせでもあったらしい.
 
 ゼム=ジェイコブ大尉は,シリア=デルグビール三等兵曹を艦長室に呼び怒鳴りつけた.これ以上もめ事が続けば軍籍も剥奪されかねない.シリア=デルグビール三等兵曹は身動き一つせず,直立不動でひたすら
「申し訳ありません.艦長殿.」
「以後気をつけます.艦長殿.」
 を連呼した.罰として上陸禁止を命じたが,彼女には余り意味がなさそうだ.ゼム=ジェイコブ大尉は根負けして命じた.
  

Poser5 & Shade 

「取りあえず今回の件は,公式には不問とする.下がってよし.」
「ありがとうございます.艦の名に泥を塗るようなことをして本当に申し訳ありませんでした.艦長.」
 ゼム=ジェイコブ大尉は腹立たしく応じた.
「下がってよし.以後きをつけろ.」
「はい.艦長.次ぎは負けません.」
 シリア=デルグビール三等兵曹は言い残すと艦長室を辞去した.

 シリア=デルグビール三等兵曹の治療に当たっては,リカルト=ハイリジルク三等兵曹がささやかな復讐を果たしていた.リカルト=ハイリジルク三等兵曹は,たっぷりと音着せがましく治療にあたり,まんまと燃料精製装置の見張り番の免除をせしめたのだった.
 

 

 


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